飼い主様はどちらやら

1人歩く少年。
その少年には様々な目が向けられていた。
憧憬、羨望、情欲…。
彼はそれを心地がいいとばかりに受け止め、風をきって歩いていた。

「ここにいやがったかクソガキ」

この瞬間までは。

『うわ…

お犬様が僕に何の用？』

「勝手に出歩くんじゃねぇ

手間かけさせやがって」

『それはお前の都合でしょ

僕には関係ないね』

少年は颯爽と駆け出した。
まるで天使が羽ばたくように大胆に。
潮風香るこの街を仕切る人物を前に、臆する様子もなく。

「おい待ちやがれ！！」

怒鳴った男の方をチラリと見た少年は笑った。
いや、嗤った。

『パパに言っておいてよ

_____可愛い息子は組を継ぐ気はありません

ってね』

世間の多くは知らない。

このわがまま天使が火貂組組長の息子であることを。執筆状態：更新停止中