【おそ松さん】赤薔薇を君に【おそ松】

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1輪の赤薔薇の花言葉

君に一目惚れ、俺には君しかいない

君を愛しています

熱烈で強烈な恋

愛情、情熱、模範的

【おそ松さん】平凡な自分と真逆な6人のまとめ【完結済み】のその後のお話です

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頭がぼんやりとする。

今日わたしはおそ松さんに、呼び出し食らった訳で。彼は、わたしの好きな人で。わたしは、彼に好きだと言われてしまっている訳で。

つまり彼と両想い、な訳で。

今日も飽きもせずに、服を選ぶのに神経をすり減らせていた。

わたし、これくらいしか能がないからな…。

今更何て言えばいい？…貴方の事を好きですと。
何処か捻たわたしは、馬鹿な言葉を紡がないだろうか？…面倒臭い所も好きだと。

ただ、この恋が成就すればいい。愛が実ればいい。

期待する。

何気ない休日。そんな日の出掛けにかかってきた電話はあまりにも唐突で、心臓が飛び出そうだった。

『YOU、来週の土曜確か仕事休みだよね』

何故LINEじゃないの？何故知っているはずの休日を聞くの？何故会いたいの？何故、が止まらない。

「は、はい…」

実際には何も言えずに、コンプレックスの吃りが小さく出て、感情の変化を現した。

『…だよね』

彼はもう一度だよね、を重ねて間を置く。

もうそんなことされてしまったら、エンドレスで何故がぐるぐる。

『……夜、会える？』

少し緊張した様な、彼のいつもと違った固めの声に心臓が跳ねた。

「……はい」

『…ん』

耳が熱い。

スマホを離して、一目散に洋服ダンスを開けた。

服がどうだから彼がこう、なんてないのは分かっているけど。もう乙女心に染まる脳内は目の付け所が違う。

メイクとファッション。

口紅の色も、グロスの有無も、アイラインも、赤面症対策のチークにファンデ。何かと気を使う。最善を尽くして、彼に会いたい。薄化粧と言われても、やっぱりナチュラルメイクは崩せない。

顔を見直し、ヘアスタイルを見直して。

インターフォンが鳴り、おどおどしつつも足早に向かう。コーデをガーリーに寄せたのは、彼がこういうスタイルの方が好きかなと思ったから。
差し色は赤色のショートブーツ。

似合わない？
自分には珍しい系統のシューズに手を出してしまったのは何故？目が離せずに、厳しい中でも財布を開いてしまったのは？今日初めて履く理由は？

これも、もう色々と手遅れ。
…おそ松さんの色だ、と思ってしまったから。おそ松さんに見せたい、と思ったから。
赤が好きになる。

彼が好きになる。

「おそ松さん、こんばんは…」

「…こんばんは、YOU」

彼の目線が足先に落ちた、わたしの名前を呼んでくれた、それだけで足が浮きそうになる。

隣を歩くおそ松さんの様子を横目で窺って心臓が跳ねた。

おそ松さんがわたしの足に合わせてくれてる、なんて自惚れが思い浮かんだから。

「今日、は…」

どこに行くんですか？と聞こうとすると彼がわたしのショートブーツを見つめる。そんな些細な視線が気になって、喋りが途切れた。

「YOU、その靴さあ」

く、靴来た…！？新しい靴って気付いてくれた？それとも不自然？
こくこくと何度も頷いて、彼の続きを待つ。

「すっげえ可愛くない？」

俺そういうのめっちゃ好きなんだけど、とおそ松さんが笑う。

「てかそれ履いたYOUが可愛」

「お、おそ松さん…」

その言葉に思わず口が動いて、彼に思いを伝えようとしていた。

「な、何？」

彼が笑いつつも、何となくわたしに動揺している様に見えるのが、どうしようもなく心をフワフワとさせる。

「……この靴がおそ松さん、の色だなとか…おそ松さんに、見せたかった、とか。今の台詞で、ドキドキしたとか」

おそ松さんが一瞬きょとんとしたかと思うと、頬が赤くなっていく。自分に至っては顔全部が赤くなっている自覚があるのに、何故か言ってしまった。

「…言ったら、何言ってんだこいつ、ってなりますか」

グリーンのコントロールカラーでも、隠しきれない赤面症。

「……あのさ」

おそ松さんが口元に腕をやり、わたしを見つめる。

「…はい」

「YOUのそういう所、少しずるいと思わねえ…」

彼がはああと脱力しながら顔を覆い隠す。

「…嫌い、ですか」

そんな彼にぽつりと呟くと、ビクッと驚いた様に肩が跳ね、まだ赤い顔を上げてわたしをまじまじと見つめ直した。

「……ちょっと今日のYOU、攻めすぎ」

彼はたははと笑って、赤らめた頬を擦る。それでも引かない赤に、わたしは自惚れてしまいそうで、嬉しくて、また顔が熱くなる。

「そんなこと言われたら俺勘違いするんだけど」

「……もう一つ、あるんですが」

「……俺殺す系？」

おそ松さんが何とも言えない目になる。

「そ、それは分かんないですけど…おそ松さんの言う勘違いが、わたしが…おそ松さんの事をれ、恋愛的な意味で好きだという事なら」

わたしの訥々とした話に刻まれている、溢れる思い。

何なんだろう、と思っていた。
彼に気兼ねなく笑えるあの瞬間が凄く好き。優しく受け止めてくれる所に、強い安心感を覚えている。笑っている貴方の隣に居れると、自然に笑える。貴方の明るさが素敵で、全てが眩しい。

わたしには余るくらいの幸せが、訪れて、わたしを包む。

笑顔の気持ち良さが、わたしを溶かした。

ああこれは恋だ、これは愛なんだ。

「…勘違い、とかじゃないです」

吹いた風に髪が靡いて、貴方のことが好きです、が流れてしまった。

「……俺、すっげえ幸せだわ」

けれど、そんな抜けた、一歩足りないわたしに見せてくれた彼の笑顔に凄くときめいたから。

わたしは、今はこれでいいんだと思った。

「…手、繋いでいい？」

「…はい」

おそ松さんと手を繋いで、彼に身を任せる様にして少し凭れ掛かってみると、わたしの手を包む力が強まることで応えてくれた。

今手を繋いだ意味。わたし達の中であの時とは変化している、のかもしれない。

少なくともわたしにとっては、とても特別で。

彼といれることで感じる多幸感は、本当に何物にも変えがたい。

ゆっくりと二人で歩いていると、段々とカップルが増えていく。

わたし達もこれに仲間入りしたのか、と思うとほんの少し気恥ずかしく、照れくさい。

どこに行くのか聞き忘れていた、とおそ松さんの顔を見上げると、彼は困った様に頭を掻いた。

「……俺さ、今日玉砕覚悟でもっぺん告ろうと思ってたんだけど」

彼が立ち止まった場所は。

「……え！？」

30階はありそうな高層ホテルの前。腰が引けて、くるっと方向転換しようとすると。

「いや逃がさないよ？」

その途端ガクッと身体が傾いた。
彼と繋いだ手が仇となり、リードの様になってしまっている。

「ちょ、ちょっとおおお！」

おそ松さんがビビるわたしを引っ張る。

「何でそんな嫌がってんの～」

ケタケタと笑う彼が余裕たっぷりで、益々わたしの場違い感が高まる。チラチラと他の人の視線を受けて、ぱっと彼の手を振り放し自分の格好を手で彼に示す。

「わたしの服見て下さいよ！？」

…せめてワンピースなら。
チュールスカート、ショートブーツ、セーター。

頑張って選んだけど…、普段着だよこれ！おそ松さんが知らせてくれたらちゃんとした服を着れたのに…！

「可愛いじゃん」

おそ松さんに真顔で言われて、ぼっと顔に熱が上る。

「かわっ…可愛い、とかじゃなくて！ドレスコードがあるんですよーー！」

「何それ？」

何それ、と言いつつも彼がちゃっかりジャケットを羽織っていることに気が付く。

「嫌ですー！もう絶対わたしこんな所こんな格好で入れないですよお！」

「俺の可愛い彼女突き出されたらソイツぶん殴ってやるけど」

「…そういうことじゃなくて！」

抵抗も虚しく、自動ドアが開き、その音にうえっともひいいとも付かない変な声が漏れる。おそ松さんがそんなわたしを見て爆笑しながらエレベーターのスイッチを押す。

「おそ松さん…ど、どこからこんなお金を」

乗り込んで、やっと事態を飲み込む。

「仕事って言って欲しい？それともパチ」

「仕事で」

「……日雇いやってきました」

「…良かった」

「うわそんなモロ安心した顔する？」

胸を撫で下ろすと、最上階でエレベーターが止まる。光景に立ち竦むわたしの手が取られ、おそ松さんとスカイラウンジに併設されたレストランに向かう。

「二名様で御予約の松野様で宜しかったでしょうか」

おそ松さんが受付をサラッと済ますのを見届けると、力が抜けてしまい彼の腕にしがみついた。

「何抱きついてきてんの～？」

「…も、もうやめて下さい……」

窓際の席に案内され、ヘタっと座り込む。周りを見渡して、思わず俯いた。

「わたし絶対場違いですよ…」

「んな事ねーって！てかYOUお嬢様じゃん、慣れてんじゃねえの？」

親族の会食に付き合わされるのと、今回とは訳が違う。

「いや……ただの田舎者ですから…」

「自虐すっげえ」

おそ松さんが可笑しそうにして、運ばれて来たペリエに口をつける。
わたしも飲もうとして、目を前に向けると。

「す、すっごい…」

輝かしく煌めく夜景が目に入った。感嘆の声が漏れた。

「ナイスリアクション！」

おそ松さんがパチンと指を鳴らす。丁度前菜が運ばれて来てウェイターさんに変な顔をされてしまったけど、気にしない。

「YOUこういうの好…何で泣いてんのもー…」

見蕩れていると、ボロボロと涙が零れた。

「いえ、もうっ…感極まっちゃって…」

「相変わらず泣き虫だよね」

対面の彼が、わたしの目元を指先で触り、優しく笑った。

「泣かねーの。嬉しいなら笑って？」

「は、はいぃ…」

泣いちゃうことは少しだけ予想済みで。ウォータープルーフにしておいて良かった、なんて馬鹿な事を思いながら、泣き笑いを作る。

「まーた泣いてるし」

「泣きますよっ、そりゃ…」

おそ松さんが吹き出したのをきっかけに二人で笑い合う。その後暫くして、わたし達はやっと料理に手をつける事が出来た。

ディジェスティフ、なる食後酒の時間に差し掛かる。

「YOU、乾杯！」

おそ松さんがデザートワインの注がれたワイングラスをわたしに傾ける。

「…おそ松さんも、乾杯」

わたしもシンデレラの注がれたカクテルグラスを彼に向け、喉に落す。

夢見る少女、というカクテル言葉があると言うのは彼は知っているだろうか。

爽やかに蕩ける甘酸っぱさ。

「…美味しい」

「ノンアルだしねー」

おそ松さんがわたしが飲み終わったのを見計らって、赤い1輪の薔薇を真っ直ぐに差し出した。それはあの時の再現の様で、真新しい瞬間の様で。

「俺、YOUの事が好きだよ」

彼からの、通算三回目の告白がわたしに捧げられて。

「初めて会った時から、可愛いって思ってたし」

おそ松さんから可愛いって言われると、すっごく嬉しくて。

「優しい所も、面倒臭い所も丸ごと好き」

理想だった。
こんなわたしの全てを受け止めてくれた上で、受け入れてくれるのが信じられないくらい。

「やっぱ俺、好きな女の子には俺の隣で笑ってて欲しいから」

わたしも必死に口を開いた。

「わ、わたしもっ…おそ松さん、のことが、好きで、す…」

言えた。何年越しかの、この思いが。

強まって、溢れて、満ちて。

「好きですっ……」

また涙が止まらなくなったけど、彼は何も言わずに優しくわたしを見つめていた。

「受け取ってくれる？」

何度も首を縦に振り、わたしは赤薔薇を受け取った。

わたしが泣き終わるまで、彼は待ってくれていた。

二人で外に出ると、満点の星。

白い息を手に吐きかけると、彼がわたしの手を握った。

「…優しいですよね、おそ松さん」

「…だろ？カリスマ性溢れてるからな～」

「…日本一、って奴ですか？」

「そうそー！YOUは日本一の男の彼女な訳よ！」

「幸せ者ですねえ、わたし」

「………今日のYOUちょっと可愛すぎてやべえ」

ふふっと軽く笑っていると、おそ松さんがわたしを見ていたことに気がつき、彼の方に顔を向ける。

そのままじっと見つめていると、彼が片腕をわたしの背中に回す。

心臓がドキドキしているのが、繋いだままの手から彼に伝わらないか不安。

「…今なら逃げれるよ？」

軽く首を横に振って、少しだけ背伸びをして。彼の顔にまで合わせようと努力する。

「……初めて？」

「………も、勿論ですよ…」

彼が嬉しそうに笑って、わたしの頬を触る。

「好きだよ、YOU」

「わたしもですよ、おそ松さん」

おそ松さんの顔を目に焼き付けて、わたしは目を閉じた。

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