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…わたしが好きな人。

彼は優しくて、格好良くて、素敵で、可愛くて、わたしの事を好きでいてくれる、わたしの大好きな人。

…でも、それってみんなもそうでしょ?

おそ松さんもカラ松さんもチョロ松さんも一松さんも十四松さんもトド松さんも。

みんな大好き、は紛れも無い事実であって。

この心の声は、わたしそのもの。自分Bでも、少女でも、何でもなく。

わたし、自分、YOU自身がそう考えたのだ。

「はああ……」

馬鹿みたいに大きなため息が出て、眉を潜めた。

いや、分かってる。
分かってる分かってる。

…分かってる。

分かってる分かってる…と脳内で繰り返し、ごろっとベッドの上で身体を転がした。

要は今更何尻込みしてるのって話なんだ。

あれだけ感動的な最後を飾ったんだ、今すぐにでも彼に思いを伝えに行くのが人間って物…。

…うん、そんな物じゃないかい?

「……誰に言ってんだろ、わたし」

何だか、あやふやになってしまったのだ。

わたしが好きなのはみんなであって、みんなが好きなのはわたしであって。

こうやってみると、お互いに矢印が向き合っていて、何が問題があるんだい?ともなる。

…でも、そんなはずが無い。
全てが問題なのだから!!

だってこれは両思いの相互方向の矢印でなく、片思いの相互方向の矢印である。

その中でわたしは…。

唯一彼を、性愛者として捉えている?

全員に交わされた口付けを嫌がらなかったのに?
…自分からも返したのに。

それはすっごく厚かましい様な気がするな…。

誰でもいい、なんて思っていないけど。

けど、けど、けど。
恋愛経験皆無のわたしには、難しい。

そりゃあ好き、好きだよ。

でも、わたしと彼が結ばれたらどうなるの?もうみんなとの関係が崩れるんだよね。

わたしはそれを覚悟したけど、みんなが積み上げてきた関係さえも丸ごとわたしが壊してしまう。

会って大体一年そこらのわたしが、彼らの兄弟関係まで勝手に掻き乱していいのか?

でも、彼はわたしとそうなりたいのであって。わたしもそうなりたい、とは思う。

でも、彼以外の人も勿論大切なのであって。

彼が一番好き、なんて言い方は失礼千万であり、無礼極まりない。

でもそんなことを思うのは全員に失礼で。

それに、本当にわたしはそう思っているのか?

順位付けなんてしたことが無いのに。

いざ向き合ってみれば、わたしは彼が6人の中で一番好き!なんて、とてもじゃないが言えない。

わたしは6人の誰にもまんべんなく救われていて、大好きで。

…こんなことを思うのも失礼なのか?

誰かに決めなきゃ、選べない…とか、ではないんだよ…。でも選ばないのは失礼だよね。でも選ばなきゃ…とかいうのも失礼な様な。いや、いや…。

というか、こんなことを思っているのか?と自分に問いかけたり。こんなふうに迷う事態、何だか…。

それも間違っているような。

……どうすればいいんだろう。

わたし、面倒臭いなああ…。

思考力の衰えと自分の貧弱さを感じる。

この日は眠れない夜を過ごした。

結局わたしは次の休日、思いを伝えるためにと。

フラワーショップに立ち寄った。

「いらっしゃいませ、お探しのお花、またはご希望などがございましたら」

キョロキョロと辺りを見渡していると、優しげな店員さんがわたしの元に近づき微笑んだ。

お花の種類は既に決まっている。

「えっと…薔薇はどこにありますか?」

彼に貰ったお花。

薔薇を渡すことで思いを伝えられたらいいな、と前前から思っていたのだ。

「薔薇ですね…ちなみに、どのようなお方に?」

店員さんに振り向かれ、自問自答を始める。

「…大切な方、です」

「なるほど、素晴らしいですね…それでは、ごゆっくり」

店員さんに頭を下げて、薔薇の花が刺さったバケツや鉢植えなどを見回す。

…すごい。

薔薇に、こんなにも沢山の種類があるとは知らなかった。

花弁の形、棘の有無、葉の有無、大輪、小輪。

同じ物など何一つとしてない。

そして、それ以上に目に止まったのは。

…綺麗な色。

鮮やかな色だった。

変わった物だと、黒色なんてものもあるらしい。

今日は既に完売してしまったらしいが、わたしが目をつけていた訳ではないので構うことは無い。

わたしが気になる色は。

赤、青、緑、紫、黄、桃。

立ち並んだ6色の薔薇。

その中には勿論彼の色もあって、とくんと心が跳ねた。

ベタだけど…あの人と同じ色を買って…ってのがいいかな?

うん、決まり!

そして彼の色の薔薇を手に取ろうとして、小さな胸騒ぎがした。

…なんだろう、この違和感。
虫の予感?

ただ緊張してるだけ?

差し伸べかけた手を止めて、考え込む。

それでも、と手を出そうとするわたしの肩に手が乗った。

「なーにしてるの?」

「あ、トト子!トト子も来てたんだね」

トト子は頷いて、わたしと薔薇を見比べる。

「かなり熱心に見てたみたいだけど?」

「あ、あはは…えっと…プレゼント、しようと思って」

トト子の目がキラキラと輝いた。

驚くわたしに、グイグイと詰め寄る。

「えーーーっ!!誰に誰に誰に!!何松!?何松う!?おそ松くんカラ松くんチョロ松くん一松くん十四松くんトド松くん!!?」

「ま、待って待って!や、えっ…と…迷い中、というか」

トト子はお茶を濁すわたしに対して頬をつまらなそうに、不満げに膨らませたかと思うと。

「えーーっ……絶ーっ対、嘘でしょ!」

わたしに眼光を光らせた。

その様子にとても隠し通せそうになく、項垂れた。

「……嘘です」

「きゃああっ!!やっぱりね!トト子、YOUのそういうバカ正直な所大好き!」

バシーンッ、と可愛らしくも力強く。トト子に勢い良く背中を叩かれた。

おっふ、みたいな変な声が漏れた後に噎せる。

褒められていない、と感じつつも彼女に弁解をする。

「でもっ、迷ってる、っていうのはほんとなの!わたしなんかが選…というか、その、なんて言うか……」

「ええっ?それで悩んでるの?」

トト子が拍子抜けしたかのような声を出し、わたしをまじまじと見つめる。

「だってえ、トト子が告白したらあいつら絶対喜んでOKするよ?」

「うえっ!?」

トト子は、だってトト子いっつも告白されてるもん、と続けた。

「逆に、何をそんなに迷ってるの?」

彼女の純粋な瞳に、問いかけにわたしは呆気に取られた。

悩みすぎて死にたくなった…なんて言ったら、トト子はひっくり返るかもしれない。

「…みんなの告白…受けないの?」

おどおどと彼女に窺う。

「え?受けないよ?」

何であいつらと、とトト子が可笑しそうに笑う。

「こ、断ったってこと?」

「断らないよ?だから未だにしてくるよ?」

「ええええええ!?」

わたしはトト子の考えを聞いて目からウロコというか、茫然自失、というか。

白黒つけるのが正解という考えを、わたしは一度も疑ったことが無かったから。

きっちり返事をするのが正しい…のでは?

「どうして!?」

思わず食らいつく様にして彼女に近づく。

「だって…トト子は、ずーーっと!このままみんなにチヤホヤされてたいもん」

トト子は両手で天を仰ぎ、可愛らしく笑った。

開いた口が塞がらない。

なんて清々しい女の子なんだ、と感動すら覚えた。

こんなに明るくて自信に満ちた女の子と、何故わたしがこんなにもそりが合うのか…と不思議な反面、真反対すぎるからこそ合致したのかもしれない、とも考えた。

「それに、YOUも!なんで絶対応えなきゃいけないみたいに考えてるの?YOUトト子程じゃないけど可愛いし、モテるでしょ?あんな短〇クズ童〇文無しニート達よりも他の男にしたら?」

怒涛の勢いで吐き出される理論は、もう訳が分からない。

全員断ってあいつらよりもいい男にしたら?YOU合コン向きだし、と笑う横顔がすっごく可愛くて、もう何が何やら。

「トト子、今日だって身長2メートル強のイケメンの不動産王にアタックする為にお花好きの不思議ちゃん系女子になろうと思って。でもフラれたらあいつらに慰めてもらうし」

どれがいいかなー、と選別を始める彼女の後ろ姿をぽけっと眺める。

…2メートル?
…不動産王?

「YOUもさあ、そんなに深刻に考えすぎないでいーよ」

トト子は何故かウチワサボテンをセレクトし、疑問符の収まらないわたしに爽やかに笑った。

わたしはトト子の考えに全て同意、という意味ではないけれど。

彼の色の薔薇は選ばなかった。

トト子と共に、わたしは薔薇を抱いてフラワーショップを出る。

フラワーショップの前に停まっていた大きな車が、物凄い速さで走り去った。

わたし達を見るなり…だった様な気がするのは、気の所為だろうか?

トト子と、アパート前で別れる。

「トト子、わざわざ送ってくれてありがとー」

「んーん!頑張ってー」

わたしはスマホを取り出し、みんなに会えるかを訊ねた。

すぐに全員の既読が付いたのには驚いたが、松野家に入り待たせてもらう。

「お邪魔しまーす…」

「あら、YOUちゃん!ごめんね、生憎ニート達留守にしてて…」

「いえ!みんなもうすぐ帰って来るみたいです」

松代さんと玄関前で雑談をしていると、ドアが開いた。

「…お、マジでYOUじゃーん!」

「honey…」

「……どうしたの、急に?」

「…久しぶり」

「…あはっ!YOUと会えて嬉しインコース!」

「上がろっか〜…」

みんなの表情が何だか暗く、変に重苦しく感じた。

階段に上がる時に彼らの服から甘い香りがして、鼻腔を擽った。

みんなの部屋に入り、彼らが座り込んだのを見て口を開いた。

「おそ松さん、カラ松さん、チョロ松さん、一松さん、十四松さん、トド松さん」

わたしはみんなの名前を呼んだ後に、彼らの前に白薔薇を置いていく。

「…わたしは、みんなの事が大好きで。こんなわたしですが…お世話になって…感謝し切れない程です」

思い返すと、じわっと涙が浮かんだ。

「…大変失礼な事を言っている自覚はあるんですが」

その涙をこぼさないようにと、目を固く閉じた後に深々と頭を下げた。

「まだ待っていただけるなら、こんなわたしでいいのなら…少しだけみんなへの返事を待っていただけませんか」

しん、と部屋が静まり返った。

「……フラれてないってこと?」

おそ松さんがわたしに顔を傾けた。

「え、はいっ…!いつか、というか絶対に返事を出そうと思ってるので!」

「よっしゃ!んじゃ俺これ貰うわ!」

おそ松さんがパシッと白薔薇を手に取り、あんがとね、とニカッと笑った。

「honey…オレをchoiceしてくれることを願ってるぜ」

カラ松さんも白薔薇を取りそう言って、何故か口に挟んだ。

「何で口に挟むんだよ。僕も、いいかな」

わたしが頷くと、チョロ松さんも白薔薇を持つ。

「……これ貰わなかったらノーチャンスなんでしょ」

一松さんが呟く様にして白薔薇を荒く掴む。

「一松兄さん本気っすねー!よーしぼくもYOUストライクするぞー!」

十四松さんがぎゅうっと握って、明るく表情を破顔させた。

「敵前逃亡はしないよ?」

トド松さんも指先で摘み、わたしに口角を小さく上げた。

「「「「「「YOUが好きだから」」」」」」

彼らがわたしを見つめて笑い、ハッキリと宣言した。

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作者名:なえ | 作成日時:2017年1月4日 20時

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