階段から落ちたら「彼女」の世界にいました。

20段目 ページ21

見間違えだと思いたかった

だけど…

吉川「徹…」

吉川さんの徹って声が聞こえて見間違えなんかじゃないって確信した。

「…っ」

この場にいるのが辛くなり、私は徹たちに気付かれる前に去ろうと思い、徹たちが進む反対方向へと走った

乙葉「え、ちょ、A！？」

大声で私を呼ぶ乙葉の声も無視し、遠くへと走った




乙葉が追って来れなくなってLINAをしてきた
その通知音で足を止めた私は、携帯を開きながら震える足を休めるために公園に入った

入ってすぐにあるベンチに腰掛け、乙葉に返信をする。

「…はぁ」

こっちでもあっちでもモテる徹。
そんな彼と付き合ってる私。

──釣り合わないよね。
吉川さんのほうが徹と釣り合ってるし、私なんかよりお似合い。

「私…別れるのかなぁ…」

ボソッと呟いた言葉が胸に突き刺さり、ボロボロと涙がこぼれる
その涙を手の甲で拭っていると、首筋がひやっとした

「っひぇぇえ！？」

持っていた鞄を抱きしめてベンチから離れる
すると私の後ろに立っていた男の人がくすくすと笑い出した

橘「あははは！！
最高っ！！」

「たっ橘…？」

橘「よ、及川
なにしてんの？1人で散歩？」

「ま、まぁそんな感じ…？」

橘「そっか
俺は美容院行った帰り。」

散髪をして綺麗になった髪の毛をつまみながらニシシッとわらった橘。

「へぇ…いいなぁ」

橘「及川も髪長いし、少し切ってみたら？
気分転換になるかもよ」

そう言って私の涙を拭いとってくれた

「んん…どうしようかなぁ」

自分の髪の毛の毛先を見ながら少し悩む。

「また今度にするよ
ありがとうね」

橘「ん？俺は何もしてないよ？
あ、それとこれ！飲み物、あげるよ」

「え、悪いよ…！」

橘「いいっていいって！
ほら、こういう時は受け取っておくんだよ」

そう言いながら飲み物を私の膝の上に置いた橘。

「あ、ありがと…」

橘「どういたしましてーっと、ほら、お友達じゃない？」

乙葉「あ、いたいた！」

肩で息をしながら私の方に駆け寄る乙葉

「乙葉…！
急に走ったりなんかしてごめんね？」

そんな乙葉に謝ると、にこっと笑って乙葉は私の頭を撫でた

乙葉「ううん、いいの
あれ、橘くんだ！」

橘「うん、こんにちわ♪
2人でデート？」

乙葉「うん、そんな感じ」

乙葉と橘が話してる内容を聞きつつ、私は貰った飲み物をごくごくと音を立てながら飲む

乙葉「A、今日はうちくる？」

「いくいく！」

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