可愛いななじゅっこめ ページ24
痛っ、という短い悲鳴が家庭科室に響いた。
時刻は4時、放課後だ。
「大丈夫？日野さん。今日何回目よ？」
「だ、大丈夫です」
咲季は指先をくわえる。集中力ないなぁと頭の中で呟き、すぐに作業を再開した。
さっきから別のことで頭がいっぱいで、すでに五回くらいはやらかしていた。
別のこととは、Aの恋愛模様の件である。
人の色恋沙汰にこんなに動揺するのも変なものだとは思うが、流石に今回は仕方がないだろう。
(あの馬鹿、目を離した隙に余計なことを……)
Aを思い浮かべながら悪態をつく。そうこうしているうちにまた縫い針が指へと吸い込まれていった。
「痛ったっ！」
先輩の視線が刺さる。かなり気まずかった。
気合いを入れ直して、再び手縫いを始める。あっという間に、思考はAのことへと飛んでいた。
(こうならないように気をつけてたのに……)
不二に全部明かす、という提案だって出ていた。そんなことをしたら、距離を置くことになるだろうことは予想できたから、止めていたのだ。
そうしたらどうだ、案の定。結果、予想通りになってしまった。
お昼休みのあと、軽く目を腫らして教室に戻ってきたAを見て咲季は驚いた。話を聞いたときのことを思い出すと、頭を抱えたくなる。
だいぶ言いたい放題言ってしまったようだ。おかげで取り返しのつかない領域まで事態が悪化してしまった。
あとはAが素直になれば、めでたしめでたしで終わったというのに。
しかもあのときは、心配した遥夏が寄ってくるものだからさらにこじれそうになって物凄く焦ったのだ。辛うじて事情は知られずに済んだが。
咲季は、こっそり外を覗く。男子テニス部は、何やら不穏な空気に包まれているようだった。
菊丸は、怯えていた。というのも、目の前の不二から黒い何かが滲み出ているからである。
何かがあったのはわかる。ついでに、時々様子を窺うようにAを見ていることから、何かがAとのトラブルであろうということも予想できた。
そして、態度に出さないようにいつも通り振る舞っているのもわかる。
雰囲気だけが、不二の機嫌を物語っていた。
「ふ、不二？」
「なんだい、英二？」
表面上は普段と変わらない笑顔が、菊丸に向けられた。
触れていいものかと迷う。しかし、周りのどうにかしてくれという視線を受け、菊丸は口を開いた。
「何かあった？」
そのとき、その場の温度が数度下がる。
「まぁ、ね」
事情を聞いたのは間違いだったようだ。
その冷たい微笑みに、菊丸や他の面々はさらに怯え、結果場をさらに悪化させただけだった。
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翡翠月(プロフ) - かるぴんさん» もったいないお言葉ありがとうございます！！！！更新止まってる間もかるぴんさんが何度もコメントくれるおかげで頑張ろうと思えてます〜〜！本当にいつもありがとうございます！！！かるぴんさんもご自愛ください〜〜！ (2023年2月16日 21時) (
レス) id: 5bb47fcc64 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 最新話嬉しいです。読み終わった後に幸せな溜息が出ました。お詫びも拝読しました。これからも続くと分かりとても嬉しいです！いつまでも待ってます！寒い日が続きますのでお体には気をつけてください！ (2023年2月11日 4時) (レス) @page45 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠月(プロフ) - かるぴんさん» うわあああああああああかるぴんさんいつもありがとうございます！！！完結になってるの見てびびりましたwwwまだまだ続くのでご安心ください！！！大変お待たせ致しました最新話です！！！ (2023年2月8日 19時) (レス) @page44 id: 5bb47fcc64 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 何回読んでもキュンキュンです。クラスメイトや親友のキャラも好きです！キャラが生きてる！て感じの文章で本当に引き込まれます。続きがあったら是非読みたいです！お体に気をつけてお過ごしください！ (2023年2月8日 3時) (レス) @page43 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠月(プロフ) - かるぴんさん» 成長しました！！！！最初の頃と比べて本当に変わったなと思います(*´ω｀*) (2021年9月18日 18時) (レス) id: 9e8e228d17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠月 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/hisui__dream
作成日時：2018年1月29日 0時
