いつか太陽を落とす【マギ】

18.妖術 ページ18

港へ集う者を爽やかな潮風が迎えていた。
鮮やかな濃紺の長衫がはためく。いつものように従者が日傘を持っていないため、直接日光を浴びているAの肌は白く反射し、どこか空の彼方へ消えてしまいそうな儚さがあった。

「アラジン殿、アリババ王子、どうもお久しゅうございます」

金色の糸のような輝きを持つ髪は、アリババの明るい笑顔によく似合っていた。その隣ではくれない色の髪の少女と、ターバンを巻いたアラジン。
Aは上品に腰を折ると、アラジンへ駆け寄り、頬を染めて腰を屈めた。

「アラジン殿！アラジン殿は炎の魔法が得意だと聞きました。ぜひとも勉強させてください！」
「いいけど…Aさんはどんな魔法が得意なんだい？」
「強いて言うならば光魔法です。光のない空間に明かりを灯すことや、影を操る…あと、幻影を映すことです。物理的な攻撃はできません」

試しに、太陽によって映された自身の影を歪ませると、ゆるゆるとカーブを描き猫のシルエットに変化させて見せた。周囲の人々が感嘆の声を上げるが、魔法を使った本人は不安げにアラジンを見つめている。

「あの、私は…お役に立てそうですか…？」

この魔法は戦場で一度だけ使ったことがある。夜討ちで敵の陣へ事前に数人だけで偵察へ向かったときだ。月光に照らされた影を狐の親子に化けさせ、多少の物音を出してしまったが、その陣に大将がいるという確認をすることができた。少しの手柄を立てられた記憶があるが、よくよく考えたら対人戦のこと。迷宮で通用するとは限らない。

「うん！すごいね、こんなの初めて見た！」

Aは嬉しそうにはにかんだ。

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