第三百一夜 唯一 ページ22
〜Noside〜
「なっ……カオン！？」
「………」
ゼインの驚きの声にも動じず、カーフィアは剣を振りかざす。
カーフィアの攻撃をゼインはギリギリで避ける。
「どういうつもりだ、カオン。ユユの暗殺に失敗したから、俺からシンドバッド王を守るつもりか？」
「それもある。……けど」
ガキンッと再び刃と刃が触れ合う。
ゼインはそれを咄嗟に防ぐ。
「ここは、私にとっての唯一の"居場所"だから。
…━━━こんな弱虫で最低な私を必要としてくれる、唯一の、居場所だからっ！！」
「………っ！」
カーフィアの剣を勢いよく跳ね返し、ゼインは窓枠に足をかけ飛び降りる。
カーフィアもそれを追うように飛び降りた。
中庭に降り立ち、二人の間にはシンドリアの潮風が吹く。
「ねえ教えてよ"先生"。どうして私にユユを殺させようとしたの？」
「……っ」
カーフィアの問いかけに、ゼインは唇を噛み締める。
「私に任せなくたって貴方にチャンスはいくらでも……━━━」
「…………━━うるせぇっ！！！」
「！？」
突然のゼインの叫び声に、カーフィアは肩を揺らす。
驚きの目をするカーフィアをよそに、ゼインは叫ぶ。
「うるせぇうるせぇうるせぇっ！！
お前に何が分かるんだ！！偽りの名で、居場所を手に入れ、人殺しの娘のくせに幸せに暮らしているお前が！！」
「せ、先生……？」
「実の兄からも愛されることなく、居場所を失ったこの俺の気持ちが、お前にわかるっていうのか！？"兄さん"にも姉にも愛されていたお前に！！」
ゼインはそう言いながら涙を流す。
先程の威勢など見られず、ただカーフィアに向けて泣き叫ぶ。
「あの組織だけが俺の唯一の居場所だった。俺の存在意義を見つけられる場所。
……なのに、あの日アイツが組織を消してからっ……━━━━━」
ゼインはそこまでいうと再び唇を噛み締めた。
カーフィアはその様子をじっ…と見つめる。
ゼインはそこまでいうと、自分の頬に伝った涙を袖で拭き取った。
そして、カーフィアを見て口を開く。
「だから、復讐してやろうと思ったのさ。居場所を奪ったアイツと、愛されたお前に。
だから俺はお前にヤツの暗殺を頼んだ。そしたらアイツも死ぬし、お前も一生後悔しながら人生を歩むことになる！
…━━こんなにいい復讐は他にないだろう？」
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ロータス蓮(プロフ) - 突然失礼します。作者様は私を悶えさせながら泣かせる天才か何かですか…？好きです (2021年6月30日 14時) (
レス) id: f03dadf55f (このIDを非表示/違反報告)
花舞花音(プロフ) - 厨二乙さん» いえ！こちらこそいつも素敵なお話をありがとうございます！ (2016年3月13日 8時) (レス) id: da6eceae08 (このIDを非表示/違反報告)
厨二乙(プロフ) - 花舞花音さん» 全然大丈夫です！素敵なイラストありがとうございます！ (2016年3月13日 7時) (レス) id: a105ecbf82 (このIDを非表示/違反報告)
花舞花音(プロフ) - 厨二乙さん» 構いませんよ！描くと言ってから日数があまりにも空いてしまい本当に申し訳ありませんでした！(;＞人＜;) (2016年3月13日 0時) (レス) id: da6eceae08 (このIDを非表示/違反報告)
厨二乙(プロフ) - 花舞花音さん» ありがとうございます！絵を載せてもよろしいでしょうか……？ (2016年3月12日 18時) (レス) id: a105ecbf82 (このIDを非表示/違反報告)
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