【マギ】弱くてニューゲーム

昔から運はすごぶる悪かった ページ3

私の目を覚ます原因となったのは、遠い昔に別れを告げた家族でもこの世界へ足を下ろす理由の神様でも、薄い希望であったシンドバッド達でも、主人公二人でも無かった。

頬を走る痛みに眉を寄せれば威圧的な声が上から降ってきた。

「ようやく目が覚めたようだな」
トゲトゲとして意地悪そうな声。痛みという仕打ちを受け目覚めた私に愛想なんて微塵もない。気だるく顔を上げれば予想外の人物が立っていた。

誰が想像できるだろうか。目の前の人物が迷宮で最終的に幼児退行を起こして死んでしまうあの悪名高い領主だと言うことに。ジャミル、中の人のせいで私の脳内を占めるのは某ブルーバスケ少年という事実に。

俺に勝てるのは俺だｋ(以下略
因みに一番推しは悪童さんだった。

私の驚きは顔に出ていたらしい。自分がこうも淡々とできているのはきっと脳が考えることを拒否しているからだ。痛みを感じたのは随分と久しぶりのことで、まるで痛みを受けた頬が燃えているように感じた。

頭の隅で神様の少年が私の力を全て使ったということを認識したが、言ってしまえば私もかつては普通の人間だった。ただ元に戻っただけだ。ただ、痛みをもろに感じる今腕輪の感触も無い＝私を保護する人は誰も居ないのは不都合ではあった。

「本当に君の造りは見事だよ。青玉を思わせる瞳に宮廷で使われる器のようにすべらかな四肢。鼻、口の配置も完璧としか言いようがない。ここまでくると気味が悪い。君は人形屋にでも飾ってあったのか？僕は君を気持ち悪いと思っているし、嫌いだが興味はある。僕を誘惑する君は魔術でも使っているのか。まあ、簡単に言うと君を野放しにしたら民も困惑し君によって壊されるだろう。ともかくそういうことを踏まえて今日から君は僕の物だ。勝手に口を開くな、動くな、歩くな、息をするな。ああ、息をするなは冗談だよ」

えっ、気色が悪い。淡々と、それでも興奮を隠しきれない様子の領主さんにかつての勘が戻ってくるような気がした。

私がマギの世界へくるにあたって何故か避けられなかったもの。前作を見てくれた人には分かっていただけると思うが、あえて言わせてもらうとキャラの謎のヤンデレ化である。キャラのヤンデレ化である。それにより私のHPが削られ、ストレスで胃がマッハとか何度思ったことか。

「君は僕から逃げる事は叶わない。人形はおとなしく主人に気に入れられるようにおとなしく口を噤め、出しゃばるな」

もうすでに詰みを感じているのですが、これは。

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