薄桜鬼〜明眸の千里眼〜

浅葱の羽織 ページ16

直感的に急所を狙わなければと悟ったAは自分から刀を振りに行った。
狙うは一撃で相手を倒す事が出来る心臓。

貴女「はっ！！」

肋骨の間から心臓を一突きにし、即座に抜いた。

吹き出る血液を身を翻して避ける。
敵が悲鳴を上げて地面に伏せる頃には、すでに納刀していた彼の動きは無駄がない。
優雅に倒れた敵を見据えるAには一滴の血も付着していなかった。

貴女「“これ”は人間・・？」

倒れた敵を見るためにAは身を屈めた。
髪は白髪で、見たところ人間のようだ。
瞼を持ち上げると光を失った瞳が彼を見つめる。

男の目を見ると、千里眼に大人数の同じ羽織を着た団体の映像が見える。

貴女「浅葱の羽織と言う事は沖田君の仲間？
けど、この人はどう見ても正気の沙汰じゃない・・」

それに傷の治りも人間ではなかった・・

屈みながら顎に手を置き、思案していると。

貴女「！？」

背後に戦慄が走る。
警鐘が鳴りその場から跳びぬくのと、戦慄の原因である人物が刀を振り上げるのとは同時だった。


ザッ！！


貴女「？」

空気を裂く様な音を耳元で聞く。
その人物から距離を取り、片膝を突きながら刀の柄に手を置いて相手を見据える。

貴女「浅葱・・？」

相手は事もあろうに、先程Aが倒した男と同じ浅葱色の羽織を羽織っていた。
夜目が利くAは満月を背にして立っている男の顔を見て目を見張り、

貴女「トシさん・・！」

口の中で呟いた為、彼の声は相手に届かない。
驚愕に呆然としていたAは更に背後に迫る男の姿に気づかなかった。

？？「今日は三回目だね、『鬼殺し』さん。」

貴女「！？」

ハッとした瞬間、首筋に激痛が走り、Aは前のめりに身体が傾くのを感じた。

激昂→←傷の治癒能力

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