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5.Ki ページ36

Ki side




陛下の寝所を辞去して、宿直所に向かっていた俺の背中に声がした。



Ki「藤ヶ谷…⁈」


弾かれたように振り返って、その姿を捉えて俺は目を見開く。


Ki「えっ? お前、今陛下のご寝所に急用だったんじゃ…」


だから、俺は陛下の御前から退がったのだ。

皇族方の公務関連を担う藤ヶ谷からの火急の用事と聞いて、一体何事かと慌てた。

…なのに、まだ大して時間も経っていないのに、何でこんな所にいるんだ⁈



Ki「おぃ、陛下は?」

F「そんなコトよりも、ちょっと来い!」

Ki「そんなコト…⁈」


グイッ…‼


一瞬耳を疑ったが、藤ヶ谷は鬼気迫る様子で俺の手首を掴んだ。



T『藤ヶ谷太輔…ただの噂なんだけど、彼とミツが親密だって聞いたものだから』

今夜、寝所で陛下の冷めた視線を思い出す。


T『ミツは、オレのモノになるんだから…たかが噂でも他の誰かと親密な関係とか、オレは気分良くないんだけど』


だけど、俺の無言の抗議なんか全く通用しなかった。







Ki「もうっ、いいから離せよ!」


連れて行かれたのは、対屋の外れだった。

今の季節、陛下がお使いになられない衣裳や調度品を保管しておく場所だ。


こんな夜更けに、当然ここには誰も訪れたりしない…だから、藤ヶ谷は俺をここに連れて来たんだと確信した。


無人の室内には、暖を取る火桶なんてない。

真っ暗闇の中…吐く息が真っ白に色付くくらいの寒さだった。



Ki「お前、いきなり現れて何なんだよ!」

ガッチリ捕まれていた腕を振り払って、対峙した藤ヶ谷を睨み付ける。


F「……りだ、、?」


藤ヶ谷の声が小さ過ぎて、よく聞こえない。


Ki「え…」

F「どういうつもりなのかって、聞いてるんだ!」

Ki「へっ? 何が…⁈」


藤ヶ谷が一歩距離を詰めて来て、逆に俺は無意識に一歩後退る。


トンッ…


腰に当たった衣裳箱に、俺の全身は緊張に強張った。


宮中でも、陛下と並んで圧倒的な存在感を誇る藤ヶ谷…そんな奴に、こんな風に迫られて悔しいが声が震えた。


F「利用されてるだけだって、言ったよな?」

…忘れてなんかない。

F「だから、本気になるなって…オレ、ちゃんと忠告したよな⁈」


藤ヶ谷が、突然我が家に現れた夜のコトは未だに鮮明に覚えている…ちゃんと全部。


Ki「でも…」


F「裕太が欲しいのは、北山…お前じゃない」

このオレだ、と動いた藤ヶ谷の唇を嫌でも意識した。


だって、それが俺の唇を塞いだのは…その直後だったから。

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設定タグ:藤北 , Kis-My-Ft2 , 歴史   
作品ジャンル:恋愛
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Mayu(プロフ) - sakyoさん» sakyoさん、2度目のコメントありがとうございます☆すごい絶妙なタイミングだったんですね。実は、私も結構そのテの映像をまえあし3人の姿に脳内変換してます。笑 丁度、たった今まで本作のオマケを『Talk Room』で書いていたので、宜しければそちらもお楽しみ下さい。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
sakyo(プロフ) - 完結おめでとうございました!お話がスタートした時にちょうど観た平安貴族そのままの世界を楽しませていただきました。そしてお話が完結するタイミングで今度は宮中儀礼の展示を観てきたところで、展示の儀式を藤北玉に置き換えながらニヤニヤしてしまいました。 (2019年11月3日 22時) (レス) id: e6f004b7a6 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - ももはさん» ももはさん、ありがとうございました!みっくんにしか靡かない光源氏的なF氏…ラストは、既存シリーズに通じる安定の嫉妬深さでした。先の読めない展開…お楽しみ頂けていたら、嬉しいです☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます。次作もご期待下さい☆ (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - himacoさん» himacoさん、ありがとうございます☆やっと終わりましたー!私の作品の世界観を気に入って頂けて、すごく嬉しいです。オマケは、実はTさん目線のサイドストーリーの予定ですが、藤北ラブも前向きに検討させて頂きますね☆最後までお付き合い頂き、ありがとうございます (2019年10月28日 23時) (レス) id: 202fbd6d68 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - Mayu様、完結おめでとうございます!Fさんの光源氏とても素敵でした。みっくんとだけ、関係を結んでくれるのが理想ですが(><)笑 本当に本当に知らない言葉もあり、とても勉強になりました。さすがMayu様です!先の読めぬ展開に翻弄されていたファンの一人でしたっ☆* (2019年10月28日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mayu | 作成日時:2019年8月11日 16時

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