20 - 5 鳥籠 ページ13
.
「私は──…」
小さく開いた口は、途中で閉じた。
様子見でひょっこり顔を出していた私と嵐と目があった為だ。
凛月はというと、私達の後ろの、彼女から見えないところでじっと壁に寄りかかって立っている。
みんなみんな、返礼祭の衣装のまま。
未だ頬を伝う汗だって、体を纏う温度だって
脳裏に広がる景色さえ、まだ消えていなかった。
「…私は、親に日本を出ろって言われてるから」
小さく笑って、何故か目の前にいるレオや泉ではなく、後ろにいる私達と目があったままAはそう言った。
「…レオが言う″止まったまま″って言うのがどういう意味かは知らないけど
Knightsはこのままじゃない
私は卒業したらKnightsの側にはいられないし、みんなはみんなで確かに先に進んでいく」
「…A」
「私は、親にモデル業に戻れって言われてるの
パリの有名な所から声がかかってるから」
横で嵐が″Paris″という単語に驚愕する。
背しか見えないが、泉だってきっと同じだった。
「…親親って、親が言うからおまえはやりたくもないモデルをするの？」
「私がモデルをすれば、親は私を認めてくれる」
「おれはモデルじゃないおまえも好きなのに？」
「レオがそうでも、親は違う
モデルじゃない私を、親は求めてない
モデル以外の私には価値がないって」
「百歩、ううん、一億歩譲って仮にそうだったとしても
……おまえはおれたちの思いを無視するの？
おれはおまえと一緒にKnightsを作っていきたい
おまえがいて初めてKnightsは成るのに」
小さな音と共に、壁に寄りかかっていた凛月が立ち上がって声のする方を見た。
『何やってんの』と、小さく呟いて。
「Knightsは5人だよ
私は夢ノ咲のプロデューサー
Knightsだけのプロデューサーじゃない」
「違う
確かにおまえは夢ノ咲のプロデューサーだけど、Knightsの女王なんだよ
おれたちが守るべき、」
「レオ」
ここからレオの表情は伺えない。
後に泉から聞いた所によると、これでもかと言うくらい、Aを睨んでいたらしい。
「…決めたの、自分で
レオも泉も、自分で決めた進路でしょ」
『着替えよう』と小さく呟いて。
Aは笑ってステージに背を向けた。
「何処にいたって、私はKnightsが大好きだよ」
目尻に浮かんで光る小さな一粒に、
見て見ぬふりをすることもできずに。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 336人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まひる(プロフ) - 雪羅さん» 時間なんて気にしません！！←ありがとうございます｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡自分勝手な妄想ばかりですがそう言っていただけると凄く嬉しいです(人*´∀｀)他の妄想にもお付き合いいただけると嬉しいです〜(*´∇｀)ﾉ (2020年9月23日 19時) (
レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 今更ですが完結おめでとうございます！漫画化、アニメ化してほしいほどまとまっていてワクワクするストーリー、とてもすごかったです。これからもまひる様のお話を楽しみにしてます！ (2020年9月23日 8時) (レス) id: 97af87c013 (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - Mashiro Lioさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました！普通のところとシリアスのところの対比が上手く伝わったようで良かったです(*’ｰ’*)ﾉまた、地の文に多少英語があるのは、この第４章の視点が司くんの為、和製英語等は英語表記、ということです(*´-`) (2020年8月17日 8時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - 無気力のおにぎりさん» 最後までありがとうございました！他の作品も徐々に進めますね｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡ご期待に添えるよう頑張ります(人*´∀｀) (2020年8月17日 8時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - 完結おめでとうございます！｢シナリオ『spring』へ戻る。｣というのが、わかってはいつつも何だかひんやりした感じを受けて、本編との対比が……。最後は無事｢ズ！！｣に移行できたということですかね。ところで最後の方、地の文に英語が増えたのは、なぜでしょうか？ (2020年8月17日 7時) (レス) id: 97626e8ffb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
