22 - 3 テオ ページ25
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「話せば君たちはシナリオを大きく揺るがす行動を取りかねなかっタ」
「…だから隠してたってこと?」
珍しく不愉快そうな嵐に、夏目は困ったように笑って首を振った。
「話す必要を感じなかったんだヨ
大体、これまで過ごしてきた1年はいつも最後までいかなかったのサ
答えを見つけられずに、最後まで気づけなくて
ネ」
「…アタシたちにあんたらが何も言わなかったから」
「聞かれないことは答えなイ
ボク達は’この世界に入った’、’理解した’と確証のある者にしか情報を与えないからネ
無駄な混乱は避けるべきだシ」
「…年が終わる頃に皆忘れるって知ってても?」
「いつループが終わるかなんて誰にもわからなイ
いつでも万全にしておく必要があるだろウ?
…今日のカミナリさんは何処か真剣だネ
ボクから聞ける情報なんか限られてるヨ」
けたけたと笑った夏目の手元には相変わらず水晶があって、その横には甘い香りのするフラスコや瓶がおいてある。
その香りが、やたら眠気を擽った。
顔をしかめた嵐は、眠気を飛ばすように首を振った。
「…いつか終わるって信じてるのね
意外だわァ、あんた、なるようになれ、みたいな傍観者的な存在だと思ってたから」
「本当に今日のカミナリさん、威圧的だなァ
…マァ、他人ならそうだったかもしれないけド
その渦中にいるのは’ボク達の’姉さんだからネ」
「…」
嵐を眺めて、夏目はくすと小さく笑う。
その笑みに、僅かな罪悪感を滲ませて。
「『アタシ達のだ』」
「、!」
「そう言いたげだなって思っテ」
そう言った夏目に、嵐も彼と同じような笑みで返した。
「…そこまで独占欲はないわよォ
可哀想じゃない
あの子はたくさんの人に囲まれて笑っているのがいいの」
「…、そういうところがキミ達にあっテ、ボクにはなかったものなのかもネ」
「…え?」
相手にできて、己にできないこと
相手がもっていて、己がもっていないもの
喉から手が出るほど欲しいものも、手に入れることは叶わなかった。
ひとつの願いで繰り返してしまった、こんな世界でも。
「…神はボク達に厳しすぎル」
「…、夏目ちゃん」
手を出そうとした嵐に、夏目は傷ついたような笑みを浮かべた。
「…デモ、そんな世界でモ
姉さんやキミたちは優しいのサ、ちゃんト」
だから君達なんだ、と
最後に夏目はそう言った。
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まひる(プロフ) - 雪羅さん» 時間なんて気にしません!!←ありがとうございます。゚(゚´Д`゚)゚。自分勝手な妄想ばかりですがそう言っていただけると凄く嬉しいです(人*´∀`)他の妄想にもお付き合いいただけると嬉しいです〜(*´∇`)ノ (2020年9月23日 19時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 今更ですが完結おめでとうございます!漫画化、アニメ化してほしいほどまとまっていてワクワクするストーリー、とてもすごかったです。これからもまひる様のお話を楽しみにしてます! (2020年9月23日 8時) (レス) id: 97af87c013 (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - Mashiro Lioさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました!普通のところとシリアスのところの対比が上手く伝わったようで良かったです(*’ー’*)ノまた、地の文に多少英語があるのは、この第4章の視点が司くんの為、和製英語等は英語表記、ということです(*´-`) (2020年8月17日 8時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - 無気力のおにぎりさん» 最後までありがとうございました!他の作品も徐々に進めますね。゚(゚´Д`゚)゚。ご期待に添えるよう頑張ります(人*´∀`) (2020年8月17日 8時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - 完結おめでとうございます!「シナリオ『spring』へ戻る。」というのが、わかってはいつつも何だかひんやりした感じを受けて、本編との対比が……。最後は無事「ズ!!」に移行できたということですかね。ところで最後の方、地の文に英語が増えたのは、なぜでしょうか? (2020年8月17日 7時) (レス) id: 97626e8ffb (このIDを非表示/違反報告)
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