【文スト】【文豪ストレイドッグス】短編集【中原中也詰め】其の6

貴方に捧ぐ【黒林檎様リクエスト：中也に肝臓を提供する夢主】 ページ27

世界が白く滲んでいく。
意識が押し流されていく。

その中で、流華はただ祈った。

中也を、助けてください。

どうか…どうか、どうか…。

※数時間前※

本日賜ったのは殲滅任務だった。
しかし。事前調査に漏れがあった。

相手が、戦闘系の異能力者を密かに雇い入れていたのだ。

こんな社会、情報は命綱。
それが、切れてしまった。

此方の主戦力は中也のみ。後は下級構成員だ。

絶望の中、彼は笑った。

「殺るぞ、手前ェら」

先陣を切るその背中に勇気づけられて。皆、戦った。
結果は惨憺たる物だった。同行した下級構成員は大半が死んだ。

それでも、ポートマフィアは勝利したのだ。

中原中也という男のおかげで。
しかし、中也も無傷では済まなかった。

『肝臓、損傷？』

流華は思わず首領に告げられた言葉を繰り返した。
意識を失くした恋人を戦地から連れ帰った彼女には余りに重い言葉だった。

「今は、出血を抑えているけれど、完全な止血は出来なかった」

医学の知識が乏しくとも、首領の表情を見れば如何いう事態かは察しがついた。

このままでは、中也の命が危ない。

そういう事なのだ。

『何か、方法は！？』
「移植ができればねぇ」

その言葉に、流華は唇を噛む。今からドナーを探していては中也が危ない。

ならば…。

『私を…私を使ってください！』

血液型は同じだ。それに、組織内できちんと健康診断も受けている。

「良いのかい？」
『かまいません』

その返答に、首領は頷いた。
そして、流華は中也と並んで手術室へ、向かった。

※

ふいに、意識が浮上した。

見える白い天井。
隣の寝台で中也が笑っていた。

『う…そ…』

てっきり、自分は中也に肝臓を渡して死ぬのだと思っていた。でも

『生きてる…』
「生体肝移植って奴らしい」

中也の手が伸びてくる。

「手前ェの肝臓の一部が、俺の中にある。
ありがとな、流華」

触れないように優しく、私の傷の上を中也の手が撫でるように動く。

嗚呼。
まだ、この人と生きていける。

そっと彼の手を握る。
暖かな温度に、思わず涙が零れた。

――――

リクエストを頂きました。
黒林檎様誠にありがとうございます！
このようなモノでよろしかったでしょうか？
可能であれば感想をお願いいたします。

2016年11月19日ちょこ

無邪気な婚約者【黒林檎様リクエスト：「無邪気な彼女」続編】→←屋上の幽霊【黒林檎様リクエスト：学パロ、学校に住んでいる幽霊に恋する中也】

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