迷ヰ犬と、癒しのひととき。【文スト】【日替わり】

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貴方を癒してくれるのは… - 2024年4月27日

➣中島敦

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「───あーっ、やっと終わった〜〜！！」






とある日の夜。

残業を終え、暗くなった探偵社内で一人、ぐーんと伸びをする。



見渡すと、先輩の太宰さんの机は資料などが散らばっているのが見える。同じく先輩の国木田さんの机は、整頓されとても綺麗だ。


──そして、敦君の机。


敦君の机も綺麗に整頓され、キッチリしているんだなぁとぼやっと考える。







「……敦君の机、か…」








ちょっとした出来心で、彼の机に座ってみたいと思った。






＊＊＊





座って見れば、私の椅子よりも低かった。


敦君の方が私より身長は高いし、そりゃあそうだけど。


彼も男の子なんだなと、少しドキドキする。











「────あれ、YOUさん？」
















少しだけ余韻に浸っていたら、敦君の声が鼓膜を揺らした。


肩がびくっと跳ねる。










「あ、敦君!? ど、どうしたの、こんな時間に」



「一寸忘れ物を取りに……乱歩さんから預かった事件の資料なんですけど、部屋で予習しておきたいなって」










眉を下げて照れ臭そうに云う彼に、少しだけきゅんと胸を高鳴らせる。


……って、そんな事してる場合じゃない！！








「えっと……処で、如何してYOUさんが僕の席に…？」








ほら！！と、自業自得なのにも関わらず自分に心の中で怒鳴る。









「ええっと……何となく…って云っても可笑しい…

　──……ごめん、…出来心だったんだ」






自滅するしか方法が思い付かなくて、素直に打ち明ける。


が、敦君は目を丸くして何も云わない。


流石に引いたのだろうか…






「……じゃあ、YOUさん。立ってもらうことって、出来ますか？」


「へっ」







彼の口から出た予想外の言葉に驚きながらも、云われるがまま椅子から立ち上がる。


あれ……如何したんだろ、段々近づいて───







「……え」








すると、敦君が私を包み込んだ。









「その……じ、実は、今来たのは忘れ物じゃなくて……

　──YOUさんに逢いに来たんです。

　残業だって云ってたから、まだ居るかもと思って」





───────疲れてるだろうし、休憩して欲しくて













──私の仕事の癒しを「中島敦」と云うものにした彼は、とても勇気が必要だったそうだ。

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