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19:両手に無機物【斎宮宗】 ページ19

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事の発端はKnightsのレッスンだった。
いつも業者が用意してくれているドリンクが、
春とは思えないほどの暑さでバテたアイドルたちによってなくなってしまったのだった。

それを見かねた先生たちが追加で注文をしてくれたものの、
校内の自販は高いし、届くまで時間がかかり即日は不可能ということで、
今月は残りわずかなこともあり私が手作りすることになったのだった。

厨房で簡易的にスポーツドリンクの粉で差し入れ作っていると、
私の恋人でもある宗先輩がやってきて斎宮節炸裂。


「『Aちゃんが作らず誰かに任せればいいのに。大変でしょう?』」
「『まったく…。こんな女の子一人に重いもの持たせるなんて、それでも騎士なの?』」


かれこれ数分はKnightsの文句を言っている。
でも文句をいっているだけで手伝うつもりはないらしい。
私の隣で台に背を預け渋い顔をしたままだ。


「自分でやってることだもん、気にしないでマド姉」
「『ねえ宗くん、手伝ってあげないの?』」
「ノンッ! 勝手に始めたのは彼女なのだから僕が手伝う義務などないのだよ!」
「『んもう、そんなこと言って…』」


これぜんぶ一人劇にしか見えないな。
と思いつつ、ありがとうと彼女に笑いかける。
それに手伝ってもらえなくても、こうしてそばにいるだけありがたい。
ただひとりで単純作業をこなすより、好きな人がいたほうがモチベが上がる。

それを知ってか知らずか、彼は不満そうにしながらも立ち去らなかった。


「…五つも作って、月永が練習に参加するとは限らないだろう」
「それでも水分はあるだけ安心ですから」
「自ら面倒事をこなしていく姿勢は本当に理解不能なのだよ…」
「あはは…」


完成した五つのペットボトルを腕の中に抱える。
作ったばかりなのでひんやりとした感覚が布越しに伝わってきた。
暑さでカーディガンは脱いでいたので、結構すぐにそれが浸透してくる。

気持ちいいっちゃ気持ちいいけど、ちょっとアレかな。
そう思っていたら、器用にペットボトルが二本抜き取られた。


「これで少し楽だろう」
「え…あ、ありがとうございます…?」
「ふんッ。そばにいるのだから少しは便りたまえ。貧弱な小娘のくせに生意気なのだよッ」


左手にマド姉、右手にペットボトルを抱えた宗先輩。
手厳しい口調とは裏腹に、口元が少し緩んでいた。

あ、やばい。Knightsのレッスン行かずに先輩といたい。

残念ながら、その願いは叶わなかったけど。



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くるみ - こんにちは!レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです!これからも頑張ってください! (2019年6月27日 13時) (レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (2019年6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します!レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います!応援してるので頑張ってください! (2019年6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです!更新いつもありがとうございます…!これからも頑張ってください!! (2019年5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:adora | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年4月24日 0時

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