キミの一番近くで【御幸一也】 (ページ13)

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# 13 ページ13

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「しつこく聞いて悪かったな…。
Aちゃんが言いたくないならもう聞かないから」

御幸くんは弱々しく笑って
私の手を掴むと掌に苺ミルクを置いて
教室から出て行ってしまい

「おい！待てよ御幸！」

倉持くんはそんな御幸くんを追いかけていった

ズゴーッ…

「…ちょっとA、聞いてる？」

「あ、ごめん…。なに？」

飲んでいた苺ミルクのストローから口を離し
俯かせていた視線を唯に移す

なんだかクラスメイト、特に女子からの視線が痛くて教室に居づらくなった私は

唯とさっちんのクラスでお昼を食べている

「それ、もう空っぽじゃない？」

「ホントだ…！」

さっちんに指摘されて初めて苺ミルクがなくなっていたことに気付いた

「さっきから上の空だけど、何かあったの？」

「えっと…2人にとって御幸くんって何？」

「「……は？」」

私の唐突な質問に、2人は顔を合わせて声を揃えた

「御幸くん？…急にどしたの？」

「その御幸くんと何かあったとか？」

「いや、別に…」

何かあったと言えば、あったんだろうけど

自分でもよくわからなくて言葉を濁すと
2人も黙考する

「御幸くんは…野球部の部員でしょ？」

「あとは投手陣を纏める女房役とか？」

「そっか…」

唯とさっちんの意見に頷き、サンドイッチを食べる

「それで？」

「ん？」

「そういうAにとって御幸くんは何なの？」

サンドイッチを呑み込んで口を開けば
2人は食いつくように少し前のめりになった

「私にとって、御幸くんは…」

「「御幸くんは？！」」

「…憧れ、かな？」

すると、2人が首を捻る

「強いチームに対して、目を輝かせるところとか
投手陣のためにわざと嫌われ役を演じたり…
私には出来ないって思うことをやるんだもん！」

2人の言った通り
御幸くんは倉持くんたちと同じ野球部員だけど

それだけじゃなくて…

上手く言えないけど
私が今こうして青道で野球部のマネージャーをしてるのは

あの日、あの場所に、御幸くんが居たからだ。

そして彼が鳴ちゃんの誘いを断って青道を選んだから。

「なるほどねー」

「Aにとって御幸くんは “ 憧れ ” と言う名の特別な存在なんだね？」

何故か唯とさっちんは私を見てニヤニヤする

「御幸くんはあー見えてルックスいいから女子に人気だし大変だと思うけど頑張れ！」

「私らはAの味方だからさ！」

そう言う2人に背中をバシバシ叩かれた