【あんスタ】進軍する騎士と爛漫の姫君(1)

灰心喪気/3 ページ46

「けど俺は、兄者があいつを好きとか許してないから。先人ぶってるくせに、あんな演技すら見抜けないとかありえない」

凛月先輩の態度はひどいものだけど、本当は朔間先輩の目を尊敬しているんだ。だからこそ、ショックなんだろう。

「リッツ、大丈夫だ！」

すると、ペンを投げ捨てた月永先輩が、凛月先輩に飛びついた。王さま痛い、という声を無視して、月永先輩は笑顔で語りだす。

「要は、レイとニナを接触させなきゃいいんだろ？なら、俺たちがニナを奪ってしまえばいい！騙し合いの、奪い合いだ！」

「なるほどねぇ、そうしたらニナの自尊心も満たせて、作戦にもそってるし。いいんじゃない」

瀬名先輩のお許しが出た。つまり皆は、「ニナをknightsで独占」しようとしてるらしい。そっか、それなら他人への被害もへるもんね。

「けどニナは「世界中の男は私のとりこ(はーと)」みたいな子ですよ？そう上手くいきます？」

「なんで(はーと)までご丁寧に言ったんですか。……私は作戦の内容がよくわからなくなってきたのですけど。結局何をすれば良いのですか？」

私の質問には、瀬名先輩が「そこらへんは俺らが上手くやるから大丈夫」と答え、司くんの質問には鳴上先輩が「司くんは今まで通りに演技を続けてちょうだい」と答えた。たまには頼りになる先輩たちだ。(失礼)

「俺たちがやるのは、ニナの味方のフリをすること。それから、Aの無罪を証明する証拠を集めること。この二つが分かってれば大丈夫だよ。けど、無理はしなくていい」

証拠集めは、基本的には俺とナッちゃんでやるから。凛月先輩はそう言うと、鳴上先輩が「任せて♪」とウィンクをした。

それから、月永先輩が全員を見回す。その瞳は王さまらしい、挑むような目つき。いつになく真面目な声音が、スタジオに響く。

「たとえ学院全員が敵に回ったとしても、おれたちだけはずっとAの味方だ。騎士として、Aを守る」

「嫌です！」

「「「「「は？」」」」」

勢い良く手をあげていった私に、五人分の声が重なった。いい雰囲気だったんだろうけどぶち壊してごめん。けど、

「守られるのは嫌です！もともと私が嫌われたことが原因なんだし、私も動きたい！」

何より、皆が頑張ってるのに、それを頼りに何もしないなんて弱いだけだ。

「あと、私だけ仕事がないなんてつまんない！」

まあ、これが本音だけどね！！！

そう言うと、ぽかん、として私を見ていた五人が、同時に吹き出した。

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