【あんスタ】進軍する騎士と爛漫の姫君(1)

正義の歌/3 ページ35

「私は、貴方の語る正義が嫌いです」

息を吸って、それから一気に言い切る。何か言われる前に、私は続けた。

「だから、守沢先輩にお話することはありません」

目をそらしたら負けだ。驚いた顔をしている守沢先輩の目を、必死でガン見してたら目力で目を潰せそうな気がしてきた。

ていうか、これでいいのかな？ほら、流星隊=正義ってとこあるし、自分の信条を否定されたらムカつくじゃん？否定も肯定もしない、けれど悪い印象を与えることは出来たはずだ。さあ、存分に怒っていいよ、もりちあ先輩！

「……そうか」

ところが。守沢先輩は目を見開いた後、悲しそうな顔をして笑っただけだった。….…予想と違う！

「時間をとらせて、すまなかった。行くぞ、奏汰」

「はい、ちあき」

二人が席をたつ。え、待ってよもりちあ先輩。ごめんなさい！！！そんな悲しそうな顔！！！しないで！！！

何も言えずに出て行く二人を見送っていると、深海先輩だけが扉の前で立ち止まり、そして振り返った。え、なになに怖い。

「……それが、あなたの『かんがえ』なんですね」

深海先輩が小さな声で呟いた。それは、私の先ほどの発言についてなのか。それとも、私の作戦が見透かされているのだろうか。

「あなたが、そのつもりなら。ぼくは….…」

深海先輩が途中までいいかけて言葉を切る。何を考えているかわからなくて、いちいち怖い。

「……いえ、やっぱりいいです。A、あんまりやりすぎると、こうかいしますよ。むかしの、ぼくたちみたいに。ほどほどに、してくださいね？」

あれ？もしかしてこれ、深海先輩は私のことを疑って……？でもそれなら、「ほどほどに」なんて言わないよね。あと深海先輩のその微笑はなんなの？？もう読めない、深海先輩がよめない！！

私は真顔(頭の中は正直さっきからパニック)を保ちながら息を飲み込む。と、深海先輩の目が、すっと細められた。深海より冷ややかな無表情が、私に向けられる。



「それと。……いくらあなたでも、ちあきの『せいぎ』をひていしたのは。ちょっと、いらっとしました」


「それでは〜♪」と、深海先輩は今度こそ扉から出ていく。一瞬の威圧感はなんだったのか、にぱっと明るい笑みだった。何いまの、奇人こわい。

一人になって、イスにもたれかかる。成功してるはず、なんだけど。

「なんか、上手くいってないような気がする……」

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