この国に魔法をかけよう。 (ページ10)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:7,726 hit

二度あることは三度あるならぬ、一度あることは二度ある。ページ10

*

Aとアスタ達が別れて数十分後。途中でラックと合流したアスタ達は宝物殿に到着していた。

道中、Aを探しに行った方がいいんじゃないか、というアスタだったが、ラックの｢問題無いよ｣の一言で片付けられてしまった。

それは共に暴牛の仲間としてAを見てきたラックのAへの信頼である。

･

･

宝物殿前にてダイヤモンド王国の魔道士と交戦。結果はアスタ達の勝利であった。

勝利であったと思っていた。

｢みんな逃げ＿＿｣

魔力感知の得意なラックがいち早く異変に気付くも遅かったらしい。

倒したと思ったそいつ…マルスが復活していた。

この短時間ではありえない回復に皆は目を疑った。

通常、魔法属性というのは1人一つである。それをこの男は鉱石と炎。二つの魔法属性を所有していた。

アスタの2本目の剣により今度こそ勝ったと思われた。

そこで力尽きたかのように倒れ込んだアスタに追い打ちをかけるようにマルスが鉱石で出来た大剣を2本振り下ろす。

助けに行こうにも、皆が鉱石魔法により拘束されている為、助けに行けない。

やっとの思いで拘束を解いたユノですらどの魔法を使おうとも間に合わない。

そんな時だった。

｢黒炎竜の咆哮！！｣

宝物殿の前から聞こえるその声と、黒い炎。

｢A…！｣

姿は見えないが、黒い炎を使う者なんて一人しかいない。

煙が晴れて、視界が徐々にクリアになる。

｢ほんっとに……乗り物には乗っちゃうし、訳わかんない動物に追われるし、散々だな。｣

その姿に皆に安堵の空気が流れる。だが、Aが燃やしたのは1本だけ。2本目の剣も同じようにしてやろうと構えてみるも多分間に合わない。

その時だった。

一瞬だけ時が止まったかのようになる。

ユノの隣には手のひらに乗りそうな小さなサイズの女の子の姿。精霊というやつが姿を現した。

彼女は蝋燭の火でも消すかのような息をふぅーと吐き出せば、マルス諸共アスタを狙っていた大剣を吹き飛ばしてしまった。

今度こそ、今度こそ本当に倒したのだった。

が、安心しているのも束の間。今の衝撃で魔宮(ダンジョン)が崩壊を始める。

ユノの魔法に乗って脱出を試みる。慌てて乗り込む皆の中に浮かない表情の者が1人。

言わずがもがなAである。