207話 ページ10
｢じゃあ、私は帰るね。｣
時計の針は10時を指していた。いくら家が近いとはいえ、ご両親が心配しているだろう。
｢うん、ありがとう。｣
さつきに感謝してもしきれないな。さつきだってしんどいことは幾らでもあるのだろうに。ここまで尽くしてくれると、やはり感謝以外の気持ちもこみ上げてしまう。釘を刺されたので、また謝ったりなどはしないけれど。
｢じゃ、俺も帰るわ。｣
さつきに続くようにして、青峰くんも言った。ご両親が心配しているのはさつきのところだけじゃない、それは青峰くんのところも同様だ。
「うん、ありがとう。」と、青峰くんに言いかけたその時、私の声は遮られた。
｢何言ってるの？青峰くんは残るの。｣
そう言ったのはさつきで、私も青峰くんもさつきの顔を見る。
｢どうしてだよ。｣
私の気持ちを代弁するかのように、青峰くん本人の本音が口からもれた。
「ついさっきあんなことがあったばかりのAをひとりにするつもり？今日一日くらい、傍にいてあげるくらいしてもいいんじゃないの。」
さつきの考えはそういうことらしい。
「いいよさつき。もう夜も遅いし、私なら全然大丈夫だから。」
私なら本当にひとりで大丈夫なのだ。何も心配はいらない。それに、ふたりとも雨の中私を探してくれたのだ。風邪をひいて明日学校を休むことになってしまったら申し訳がない。
｢...わかった。｣
何かを考える素振りを見せると、青峰くんは答えた。
｢青峰くん、いいよ無理しなくて！｣
｢じゃ、私は帰るね。｣
そう言って、私と青峰くんを残して、さつきは颯爽と帰っていってしまった。今の今、青峰くんと二人きりにされても気まずい。
｢えっと、お茶でも入れてくるね。｣
一度この場から逃げようと思った。そう言って立ち上がった瞬間、突然フラッと軽い立ちくらみがした。まずいと思った時には遅くて、私はそのまま体勢を崩した。しかし、予想した痛みはいつまでも来ない。
何がどうなったのかと、私は閉じてしまった目を開けた。開いた目の先には青峰くんの顔があり、自然と私と青峰くんの視線がぶつかり合った。
その視線が、瞳が私を捕らえ、また私の視線と瞳が彼を捕らえているという状態に置かれて、私は息をするのも忘れてしまう程に、その瞳に惹かれてしまっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彗(プロフ) - さっき読みはじめて今読み切りました。号泣です。素敵な作品をありがとうございました (2020年2月23日 1時) (
レス) id: cf7fdf27c9 (このIDを非表示/違反報告)
みのもんた(プロフ) - ぁ、、あぁ( ；∀；)愛ちゃん、、、うわぁぁああ(TTTTT□TTTTT)もぅいい話すぎますよぉ！！なんかもぅすごい引き込まれました！！泣才能ありますよ！！まじで！そーゆぅアニメ見たいですほんとに。ぁあー読み終わっちゃったのがすごく残念。。これからもファイトです！ (2017年10月22日 15時) (レス) id: fd2eec93e7 (このIDを非表示/違反報告)
すふぃ - あぁ、目からポカリが、、、、 (2016年10月23日 18時) (レス) id: 38e1760aba (このIDを非表示/違反報告)
夕凪*ﾟ - すごくいい作品で一気に読んでしまいました…!!本当に感動で涙がとまりません（ ; ; ）素敵な夢をありがとうございました!!! (2016年4月3日 1時) (レス) id: ca1c6f1dc0 (このIDを非表示/違反報告)
白雷(プロフ) - すごくいい！ (2015年8月22日 11時) (レス) id: 55569623d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2014年2月28日 19時
