205話 ページ8
視界に入ったのは、今度こそ私の家だ。
自分の手を天井に向けて伸ばし、グーパーと手を握っては開いてを繰り返す。
「...現実。」
先に体験したあの不思議な現象は何だったのだろうか。普通ではあり得ないことを私は体験した。あの体験を経て、私の身に何か変化はあったのだろうか。
目を背けてはいけない、いつまで逃げるつもり
その言葉が私の頭の中に響いた。グッと胸を押し潰されるような感覚がして苦しい。
その時、もぞっと視界の隅で何かが動いた。それは桃色と青色の頭だ。
｢さつきに、青峰くん？｣
ああそうか。私はみんなの前で気を失ってしまったんだ。じゃあ他のみんなは？
｢ん...｣
二人は眠りに落ちていた。起こしてしまっただろうか。
ここは一旦部屋を出よう。そう思い、腰を上げた時、ガタンッと本棚にあった本が音を立てて倒れた。
バッと慌てて二人の方を見る。
｢...A？｣
｢お、おはよう。｣
起こしてしまった。寝起きの青峰くんは機嫌が悪いから苦手だ。
｢お前っ、目が覚めたのか！｣
｢う、うん。ごめんね、起こしちゃって。｣
｢おいさつき！起きろ！｣
機嫌が悪いと思われた青峰くんは、そんなことはなく慌てていて、まだ眠り続けるさつきの体を強く揺さぶった。
｢ちょっと、なに...｣
眠りを妨げられたさつきは当たり前に機嫌が悪いようだ。
｢Aが起きたっつってんだよ！｣
その言葉を聞くと、さつきは少し間を置いてから勢いよく体を起こした。
｢A...！｣
私の姿をその目に映すと、さつきは私の名前を呼んだ。
｢おはよう。えっと、ごめんね...｣
何から謝ればいいのかわからない。
｢っ、目が覚めたのならそれでいいよ。｣
と、肩を撫で下ろしながらさつきは言った。
どうやら随分と心配をかけてしまったらしい。本当に申し訳ない。あの後、私が気を失った後、ここで何があったのかはわからない。だから、私がどんなことをしたのかも分からないわけだけど。
｢みんなね、Aが起きるまで待って謝るって言っていたの。でも夜も遅くなるかもしれないって理由で帰しちゃった。｣
｢そっか。｣
｢みんな随分と反省していたよ。多分、明日は謝罪の嵐だね。特にきーちゃんからとか。｣
さつきは笑いながら言った。
そう言われてしまうと、黄瀬くんのその姿が容易に想像出来てしまう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彗(プロフ) - さっき読みはじめて今読み切りました。号泣です。素敵な作品をありがとうございました (2020年2月23日 1時) (
レス) id: cf7fdf27c9 (このIDを非表示/違反報告)
みのもんた(プロフ) - ぁ、、あぁ( ；∀；)愛ちゃん、、、うわぁぁああ(TTTTT□TTTTT)もぅいい話すぎますよぉ！！なんかもぅすごい引き込まれました！！泣才能ありますよ！！まじで！そーゆぅアニメ見たいですほんとに。ぁあー読み終わっちゃったのがすごく残念。。これからもファイトです！ (2017年10月22日 15時) (レス) id: fd2eec93e7 (このIDを非表示/違反報告)
すふぃ - あぁ、目からポカリが、、、、 (2016年10月23日 18時) (レス) id: 38e1760aba (このIDを非表示/違反報告)
夕凪*ﾟ - すごくいい作品で一気に読んでしまいました…!!本当に感動で涙がとまりません（ ; ; ）素敵な夢をありがとうございました!!! (2016年4月3日 1時) (レス) id: ca1c6f1dc0 (このIDを非表示/違反報告)
白雷(プロフ) - すごくいい！ (2015年8月22日 11時) (レス) id: 55569623d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2014年2月28日 19時
