209話 ページ12
｢敵わないって、どういうことよ...｣
｢あーあー、何でもねえ。｣
自らその発言をしておきながら言葉を濁すだなんてずるい。その言葉の意味が気になってこっちは仕方がない。当の本人は意地悪そうに笑っている。
そんなところも昔から全く変わっていないなと、ふと思い出に耽ってしまう。
｢さ、そろそろ本当に退かないとね。青峰くんが潰れちゃう。｣
久しぶりにこんなにも近くに青峰くんがいて、そこから離れるというのには名残惜しさがあるけれど、今はそんな事を言っている場合ではない。
なのに、どうしてか青峰くんは離してくれない。むしろ、さっきよりもその腕に力が入っているようにも思える。
｢ねえ、どうしたの？｣
そう問いかける間も、青峰くんは力を緩めようとはしない。
｢もう少し、このままにさせてくれねえか？｣
再び声をかけようとすると、青峰くんはそう言った。
一体どうしたというのだろうか。青峰くんらしくない。
｢どうして...｣
それは単純な疑問だった。
｢Aと離れるのはもう嫌だと思ったんだ。もともと、離れていったのは俺の方なんだけどな...｣
そう言って、苦しそうな顔をする青峰くんを見て、私は、ペシっと青峰くんの両頬を手で軽く叩いて挟んだ。
｢何すんだよ！？｣
｢離れないよ。｣
青峰くんの言葉を無視して、私は言った。青峰くんは目を見開いて口を噤んだ。
｢青峰くんが望むのなら、私は離れないよ。｣
私だって離れたくないのだ。だから、彼が望むのなら私は彼から離れない。
｢さ、今度こそ本当に終わり！明日も学校だしね。｣
そう言って、今度こそ立ち上がる。
｢久しぶりにちゃんと青峰くんと喋れて良かったよ。｣
部屋に散らばったタオル類を集めて片付けをする。
｢A。｣
その最中、彼が私の名前を呼んだ。
｢今度はどうしたの？｣
バツの悪そうな顔をした青峰くんが、私に向き直った。
｢大ちゃんでいい。｣
突然彼の口から放たれた、予想だにしなかった言葉に私は目を丸くした。それは私がずっと望んだものであった。大ちゃんと呼ぶだけで、私は幸せになれるのだ。
だけど...
｢そっか、ありがとう。でもそれは、全部終わってからね。｣
私からの返事が予想していたものと違ったのか、彼は訝しげな顔をした。
｢全部終わってから？｣
｢そう、全部終わってから。｣
全部終わらせるの。あの子の計画に、終止符を打つ。
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彗(プロフ) - さっき読みはじめて今読み切りました。号泣です。素敵な作品をありがとうございました (2020年2月23日 1時) (
レス) id: cf7fdf27c9 (このIDを非表示/違反報告)
みのもんた(プロフ) - ぁ、、あぁ( ；∀；)愛ちゃん、、、うわぁぁああ(TTTTT□TTTTT)もぅいい話すぎますよぉ！！なんかもぅすごい引き込まれました！！泣才能ありますよ！！まじで！そーゆぅアニメ見たいですほんとに。ぁあー読み終わっちゃったのがすごく残念。。これからもファイトです！ (2017年10月22日 15時) (レス) id: fd2eec93e7 (このIDを非表示/違反報告)
すふぃ - あぁ、目からポカリが、、、、 (2016年10月23日 18時) (レス) id: 38e1760aba (このIDを非表示/違反報告)
夕凪*ﾟ - すごくいい作品で一気に読んでしまいました…!!本当に感動で涙がとまりません（ ; ; ）素敵な夢をありがとうございました!!! (2016年4月3日 1時) (レス) id: ca1c6f1dc0 (このIDを非表示/違反報告)
白雷(プロフ) - すごくいい！ (2015年8月22日 11時) (レス) id: 55569623d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2014年2月28日 19時
