208話 ページ11
「A」
と、彼の声が私の名前を呼んだ。その瞬間、ハッと意識を現実に取り戻していく。
｢ご、ごめん！今退くから！｣
私は一体何をしているのか。床に手をついて起き上がろうと体に力を入れる。その手を、青峰くんは自身の手で掴んだ。
｢えっ、わっ！？｣
グイッと勢いよく手を引かれて、私は再び体勢を崩した。そして私に纏う温もりに違和感を感じた。
｢青峰くん？どうしたの？｣
どうして私は今、青峰くんの腕の中にいるのか。起き上がろうと、彼の上から身を退かせたはずなのに、どうしてまた彼の上にいるのだ。
しかし、青峰くんからの返事はない。
｢重いし苦しいでしょ、早く退かないと...｣
｢重くねえし、苦しくもねえよ。｣
そこで、漸く彼は口を開いてくれた。
｢無理しなくていいよ。それに、早く帰りたいでしょ？｣
そう言って、再び視線を青峰くんへと向けた。
｢...どうして、そんな顔をしているの...｣
彼の顔は、とても悲しそうで苦しそうな表情で満ちていた。
どうして青峰くんがそんな顔をする必要があるの。何をそんなに悲しんで、苦しんでいるというのか。私はその疑問に顔を顰めた。
｢お前さ、俺のこと憎くねえの？嫌いじゃねえの？｣
彼の口から語られた言葉に、私はぽかんと固まった。そして、遂にはその質問が可笑しくて笑ってしまった。
｢何笑ってんだ、こっちは真剣なんだよ。｣
ああ、ならば悪いことをしてしまった。
｢だって青峰くんってば、可笑しいんだもの。」
その言葉に今度は青峰くんが顔を顰めた。
「憎くないのかって、そりゃあ憎いよ。｣
私の言葉を聞いて、青峰くんは黙り込んでしまう。
｢でも、嫌いだなんて思っていないよ。憎いから嫌い、なんて法則はないよ。仮に青峰くんの中にそんな法則があったとしても、私の中にはそんな法則は存在しない。青峰くんのことを憎いと思ったことある。だけど、私は青峰くんのことが好きだよ。たとえ憎いと思ったことがあったとしても。それに、今はもう憎いなんて思っていないよ。｣
と、私は私の思いを言葉にした。これは、彼に伝えなければならない私の思いだ。
青峰くんは私のその思いを聞くと、クスクスと笑い出した。
｢な、何？私、可笑しなことでも言った？｣
呼吸を整えた後、大きく一息を吐いて青峰くんは口を開いた。
｢Aの方が十分可笑しいだろ。本当、Aには適わねえわ。｣
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彗(プロフ) - さっき読みはじめて今読み切りました。号泣です。素敵な作品をありがとうございました (2020年2月23日 1時) (
レス) id: cf7fdf27c9 (このIDを非表示/違反報告)
みのもんた(プロフ) - ぁ、、あぁ( ；∀；)愛ちゃん、、、うわぁぁああ(TTTTT□TTTTT)もぅいい話すぎますよぉ！！なんかもぅすごい引き込まれました！！泣才能ありますよ！！まじで！そーゆぅアニメ見たいですほんとに。ぁあー読み終わっちゃったのがすごく残念。。これからもファイトです！ (2017年10月22日 15時) (レス) id: fd2eec93e7 (このIDを非表示/違反報告)
すふぃ - あぁ、目からポカリが、、、、 (2016年10月23日 18時) (レス) id: 38e1760aba (このIDを非表示/違反報告)
夕凪*ﾟ - すごくいい作品で一気に読んでしまいました…!!本当に感動で涙がとまりません（ ; ; ）素敵な夢をありがとうございました!!! (2016年4月3日 1時) (レス) id: ca1c6f1dc0 (このIDを非表示/違反報告)
白雷(プロフ) - すごくいい！ (2015年8月22日 11時) (レス) id: 55569623d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃瑚 | 作成日時：2014年2月28日 19時
