尸魂界編 1-3 ページ10
「あら、珍しく仕事してるじゃない！」
華やかに響く声に顔を扉へ向けると、
やっほー！と軽く手をあげて十番隊副隊長・松本乱菊が顔を覗かせた
「乱菊！」
言うが早いかギンの姿は席から消えて、扉の前にいる彼女の元へと現れる
おはよ〜、と三番隊の面々と挨拶を交わした彼女は執務中のイヅルとAを交互に見つめ、随分と不思議そうな表情を浮かべた
「あんた達・・こんな朝っぱらから真面目に働いてんのねぇ。」
『隊士たちの目の前では絶対にそんな事言わないでね。』
十番隊隊長を務める天才児の気苦労が計り知れない
もし彼に見つかったら何て言い訳をしようか、と頭を抱えたAを気に留める事もなく、
瀞霊廷きってのサボり魔な二人の陽気な会話が続いていく
「なぁ、乱菊。八番隊長さんから美味しい御茶菓子もろうたんよ。」
食べるやろ？
ニコニコとわかりやすい笑顔を貼り付けて給湯室へ向かうギンの背中には、ラッキー！という文字が張り付いているように見える。
否、へばりついているに違いなかった。
食べる食べる〜！とギンに続いて給湯室へ向かう乱菊にAが盛大にため息を吐く。
その様子に同じく顔を顰めているイヅルは恐らく胃が痛くなったのだろう。
腹部をゆっくりと摩っていた。
「ねぇこれすっごい美味しいわよ！あんた達も食べなさいよ！」
「せや、息抜きも大切やで〜。」
右手におまんじゅう、左手にお煎餅を持った乱菊の向かいには
両手でお湯呑を持ったギンがゆったりと腰掛けている
今は決して休憩時間ではない。
紛う事なき、勤務時間だ。
『おにぃはともかく、おねぇまでここでサボらないでよ！日番谷隊長に怒られるのわたしなんだからね！』
「大丈夫よ。うちの隊長優秀だから♡」
『そういうことじゃないの！』
良く言えばマイペース。悪く言えばいい加減な彼女にはAも常々手を焼いている
ーー二人して事ある毎にサボろうとするんだから！！
握りしめた副隊長印にこの思いを乗せて、
それはそれは力強く判を押してやった
日常茶飯事となってしまったこの光景にため息を吐きつつも
変わらないでいてほしいと思っている自分もいる。
わたし達は護廷十三隊と呼ばれる戦闘集団。
いつ誰が死んでしまうのか、なんてわからない世界で生きているのだ。
くだらない話で笑い合っている２人を見ると、
本気で怒る気になれないのも確かだった
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作者名：おもち | 作成日時：2020年8月3日 17時
