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12 起こしちゃったから ページ13

何も考えず、ふらふらと中庭を歩く。
とっくに一時間目の授業が始まっている時間だ。

先生に心配かけちゃったかな。でも、きっとクラスのみんなは心配なんてしないんだろうなぁ。…寧ろ清々したのかな。それならいいんだけれど。


「わ、」

右足がなにかにぶつかって、躓きそうになったのをなんとか持ちこたえる。小石でもあったのかな、そう思って目線を下げると、そこには見慣れた姿があって。


( 暑くないのかな、夏なのに外で寝るなんて。)


着崩された制服とお兄さん譲りの綺麗な黒髪が風に揺れる。
彼が薄っすらと瞼を上げると、真っ赤な瞳が私を捉えた。


「…あ、」

三秒間。ぱっちりと目が合う。



「え、ぁ、ごめん朔間くん」


咄嗟に頭を下げれば、彼は「いいよいいよぉ」と呑気な返事をしながら私の髪の毛に触れた。そして、ふと何か思いついたかのように手を止めて、無理やり私の手を引いたかと思えば、彼の隣に座らせて。


「お詫びとして、膝かぁして」


了承する間もなく、彼は私の膝に頭を乗せてくる。
突然のことに硬直しているうちに、彼はまたスヤスヤと夢の世界に行ってしまって。


「え、と、朔間くん」


どうするべきかと彼の頭上で行き来する私の手。

その手が急に彼の手に掴まれたかと思えば、"凛月" といつもより低い声で告げられる。

目は閉じたままなのによくわかるなぁ。鬱陶しかったかな。




「その名前で呼ばれるの嫌なの」


( …あぁ、お兄さんのことか… )


そういえば初めて会った時も言われたなぁ。
昔から、人のことは基本的に苗字で呼ぶ癖がついていたから忘れていたけれど。


「じゃあ、凛月くんは早く嫁ぎ先を見つけなきゃね」


冗談のつもりでそう言えば、彼はパチパチと瞬きをしてこちらをじっと見る。


「嫁ぎ…?…あんたが俺と結婚すれば済む話じゃん」



彼にしては珍しく、大好きな睡眠を止めてまで私の話に付き合ってくれたことに少し驚く。彼はよいしょと起き上がり、私の隣に腰掛けた。


「でもそれじゃあ私も朔間になっちゃうよ?」
「苗字はAの方にすればいいの♪」


彼は嬉しそうに笑って、私の肩に頭を乗せて。
なんだか飼い主に懐いた小さな黒猫の姿が脳裏によぎる。

衣更くんはよく凛月くんのことをおんぶしているし、彼には常時こんな感じに見えているのかな、なんて思って。


「…暑くないの?」
「ん〜…?日差しはあついけどここの日陰は風が気持ちいから平気〜」


そういうことじゃないんだけどなぁ。

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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました!! (2022年3月29日 19時) (レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです!めちゃくちゃ楽しませていただきました!! (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり。さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり。 - 完結おめでとうございます!雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました(笑)これからもファイトです! (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年7月31日 11時

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