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11 苦しかったから ページ12

「いひゃい」

突然、彼は私の両頬を引っ張った。

流石に手加減はしてくれているけれど、きっと彼から見た私は凄く不細工に映っていることだろう。彼だけでなく、ソラさんからの不思議そうな視線に気付いてぶんぶんと首を振れば、彼の手が離れて。


「…夏目くん?」


彼の意図がよくわからずに、首を傾げる。

彼はしばらく真剣そうな表情で私を見ていたけど、少しして再度溜息をついて、やっと口を開く。
溜息ついたら幸せが逃げちゃうよ、なんて、今の私に言えるようなことではないけれど。



「そんな下手くそな笑顔じゃバレちゃうんじゃなイ?」


やっぱり意図がわからずに、更に首を傾げる。


なんの事、と聞き返そうかとも思ったけれど、なんとなく口には出さなかった。事情を何も知らないソラさんは更に不思議そうに私たちを見ていたけれど、あまり楽しげな表情ではない。

ああ、ここの人たちもきっと優しい人ばかりなんだなぁ。
そんな事を考えながら、ストローをじゅっと吸った。


冷たい麦茶が喉を通り、そしてお腹に向かっていく。



コップを握る右手にはぐっしょりと水滴がついていた。
…結露かな。部屋はこんなにも涼しいのに。



「…ホラ、そろそろ行きなヨ」


彼に促されて部屋の時計を見れば、その針はHR開始の五分前を指している。半ば追い出されるように部室の扉の前に立った時、縋るように彼の方を振り向いた。


「あの、夏目くんは、いかないの?」


少しだけ、期待していたのだ。



なんだかんだと言っても、今日一日も彼が隣にいてくれるんじゃないかと。
昨日の今日で変な話だけれど、彼ならまた、私の心を救ってくれるんじゃないかと。


彼は表情一つ変えずにこちらを見る。



「まぁ、今日はちょっとネ」


彼はそれだけ答えて、私が部屋を出るのを促すかのように部室の扉を開けた。


「そっか」


そうやって笑い返すのが、なぜだか異常に苦しかった。

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かなかなかな… - ありきたりな言い方になってしまいますが、ものすごく感動しました。所々泣きそうになってしまったり、最後はものすごくニヤニヤしたり。読んでいてとても楽しかったです。素敵な作品をありがとうございました!! (2022年3月29日 19時) (レス) id: 62f4ed090e (このIDを非表示/違反報告)
みる - 最後のタイトル回収がほんとうにすごかったです!めちゃくちゃ楽しませていただきました!! (2021年9月21日 17時) (レス) @page50 id: 8126ce0406 (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - ふわり。さん» コメント・ここまでお付き合い下さり有難う御座います。こちらこそ、これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
繕*(プロフ) - 哀霞さん» コメント有難う御座います。そう言って頂けて幸いです…励みになります。次回作の方も宜しくお願い致します笑 (2019年8月23日 14時) (レス) id: 019269e21e (このIDを非表示/違反報告)
ふわり。 - 完結おめでとうございます!雰囲気も素敵でエピローグまで一気に読んじゃいました(笑)これからもファイトです! (2019年8月21日 17時) (レス) id: 9c497f6a6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年7月31日 11時

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