29話 ページ31
「A!心配したんだからね!」
私が更衣を終えてグラウンドに出ると、貴子先輩が声をかけてくれた。
「小湊くんが、Aが囲まれてる所を見たって言ってたから…!」
「ご心配をおかけました……」
苦笑いして貴子先輩に謝ると、元気そうな私の様子を見て安心したように貴子先輩は続けた。
「小湊くんが派遣した御幸くんが助けてくれたんでしょ?」
「はい。本人は " 亮さんに頼まれたら断れないだろ " って言ってましたけど」
「ふふ、御幸くんは存外照れ屋さんなところがあるからね。
小湊くんに言われたからっていうのは事実だけど、きっと小湊くんに派遣されなくても御幸くんはAのこと助けてくれたと思うよ」
「えぇ…?そうですかね…?」
「そうよ。御幸くんって、野球してなかったらちょっとぼんやりした子なのかなって思ってたけど、意外とかっこいいわね」
そう言って ふふ、と笑う貴子先輩。
御幸のことを " 意外とかっこいい " なんて称するのは多分、2、3年の野球部マネージャーくらいだろうな。
貴子先輩とそう談笑しつつ、テープの剥がれたカラーボールの補修をしていると 何処からともなく視線を感じて思わず振り返る。
振り返った先には、焦ったような、心配そうな、それでいて怒っているような複雑な表情をした倉持がいた。
何かに傷ついたかのような、そんな風にも見える。
倉持は私と目が合うと、何か言いたげに一度口を開いて、次にぎゅっと真一文字に結んだ。
そしてその苦しげな表情のまま、守備練習に入るためグラウンドに駆けていく。
「倉持………?」
野球をしているのに、あんなに苦しそうな顔をした倉持を見るのは初めてだった。
――――――――――――――
(オマケ)
貴子先輩に " 意外とかっこいい " とディスるような褒め方をされた御幸一也 in ブルペン
「…っくしゅ」
「おいアンタ!!人には体調管理云々って言ってくるくせに自分は風邪か?!風邪なのか?!自己管理が甘いんじゃないのか?!」
「御幸センパイ、くしゃみ可愛いですね」
「アンタはちょっとばかし抜けてるところがある!!この沢村栄純の目は騙せやせんぜ!!」
「はっはっは、沢村、しばらく自主練でお前の球受けねえから♡」
「何?!ゆ、許してつかぁさい!」
「やだ♡」
「ぐあぁあ!ふ、不覚……!!」
109人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです 丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年8月15日 17時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:マカロニ | 作成日時:2020年7月24日 12時