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30話 ページ32

今日の練習中、倉持は今まで見たことがないくらいに調子が悪かった。

集中できていなかったとも言えるかもしれない。




ノックではいつもはきちんと捕球するボールを取り損ね、ゲッツーのコンビプレーでは亮さんとコンビミスを連発。




もちろん、亮さんはいつも通りだったのでミスの原因は亮さんではない。




今日の倉持は入部して以来一番の調子の悪さだったと思う。




どうしたんだろう、倉持……



そう心配に思いつつ、練習の片付けでボールの入ったカゴを倉庫に運んでいると倉庫の裏から誰かの話し声が聞こえて思わず立ち止まる。





「ねえ、良い加減にしてくんない?」



「…すみません」




亮さんと倉持だ。




姿は見えないけど、亮さんがかなりご立腹なのは分かる。
声を荒げることなく怒られるのが一番怖い。




「全部お前の甘っちょろさが招いた結果なんだよ。人の優しさに甘えてるからこうなったんだろ。自業自得。

でもその苛立ちを野球に持ち込むな。公私混同するようなヤツは青道(ここ)で野球しなくていいよ」




いつもストイックな人だけど、今日はなかなかに手厳しい。




「……すみ、ません」



亮さんの言葉に謝る倉持にも覇気がない。

憔悴しきったような倉持の声に胸が痛んだ。





…盗み聞きみたいになってしまってるから、早く戻ろう。


そう思ってカゴを倉庫の中に置き、立ち去ろうとした時だった。




「わっ!」



照明のない暗い倉庫の中では足元が覚束ない。

いつもなら上手に避けられるけど、今日はたまたま一球カゴから溢れたボールがあって足を滑らせてしまった。



幸い、なんとか持ち直して転けはしなかったけど





「……染谷?」





話が終わったらしく表に出てきていた亮さんと倉持に鉢合わせしてしまう結果に。





亮さんは亮さんで真顔で私のことを見つめてくるし、その後ろの倉持は短い眉を下げてこちらを見ている。





「あ、あはは……すみません、ちょっとドジっちゃいました」



……とりあえず笑うしかないだろう、こんな気まずい空気。




私が乾いた笑みを浮かべると、亮さんは倉持の方を向き直った。





「丁度良いじゃん。倉持、お前染谷とちゃんと話しろ。心の整理つけて来い。明日もその調子だったら本当に練習から出すから」


「はい」



倉持が返事をすると、亮さんは私のことをチラリと見て去っていった。

倉庫には、少し俯いた倉持と私だけが残された。

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マリイ - 丹波光一郎の小説も書いて欲しいです 丹波さん好きだけど小説無いんで (2020年8月15日 17時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マカロニ | 作成日時:2020年7月24日 12時

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