花宮、悪童やめたってよ。【霧崎第一】

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「Aちゃん、よく聞いてね」


原は笑った笑ったと前髪に隠された目を拭って、また怪しげに口角を上げた。
よく聞く気は全くないらしい花園の手は、相変わらず弁当に夢中である。


「花宮にはね、悩みがあるんだよ」



「ゴホッ、ゴホッ！！」


花園は、原の言葉を聞いた途端、驚きのあまりむせた。俺も花宮がああなった理由の大体は理解しているが、こんな花園をからかうようなことしなくても。

花園は口の中のものを無事飲み込むと、心底不思議そうな顔をして、


「花宮に、悩み……」


と小さく呟いた。その顔は多分始めて花園に出会った時の俺の表情に劣らないだろう。
原はそんな様子の花園を見てご満悦なようで
、うんうんと機嫌良さそうに頷く。

「そう。Aちゃんへの態度が急変したのも、そのせい。その悩みの内容は男バスの一部しか知らないんだけど」

原はペラペラと俺も聞いたことのない話を口から紡ぎ出していく。
どうやら原は、全てを知った上で花園をからかい倒すつもりらしい。

後で花宮に怒られても知らないからな…。

「知りたい？」

愉快そうに口元を緩める原に、花園は眉をひそめながらもうん、と頷く。
どうやら、花宮の悩みを人伝に聞くのは少しばかり抵抗があるらしい。けど花宮が心配なことには心配で…といった具合だろう。

そろそろ花園マスターになれる気がした。もっとも、以心伝心とかいうものではなく花園の単純な思考回路から考えを読み取るのが容易すぎるだけなのだが。


「どうしよっかなあ、じゃあヒントだけ」

原は花園の弁当箱に入っていた卵焼きを奪い取りつつ、心底楽しそうな声音で言った。
相変わらず性格悪いなコイツ…。

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