花宮、悪童やめたってよ。【霧崎第一】

閑話 原くんによる観察記録 ページ19

「では、この時の『私の気持ち』を班で話し合って考えましょう」

赤眼鏡が特徴の現代文担当の女教師が、パン、と手を叩く。それを合図に、生徒はガタガタと机を動かし始めた。
うわあ、めんど。内心そう思いながらも、机を動かして横に向ける。向かい合う花宮と花園ちゃんの手前に俺が位置するその席は、この二人の観察にもってこいだ。

「どうしたの花園さん、俺の顔に何かついてる？」

花宮はお得意の営業スマイルで花園ちゃんに微笑みかける。まだやってたんだそれ。

「眉毛」

「うるせえバカ女」

「花宮、演じて」


うん、かなりボロが出てる。
いや別に、この班俺と花宮と花園ちゃんだからいいんだけどさ、そうすると本来の目的がどうなの、っていう。

「仲良くしようよ、ほら、班活動だし」

まあまあ、となだめると花宮は舌打ちをしてこちらを睨んだ。いや、もはや演じるつもりもなくない？


「あ”？うるせえバァカ仲良＿＿ん？どうしたの原くん、ごめんね聞いてなかった」


「いや今明らかに聞いてたよね？！」


この班を一言で表すなら、デスオブデス。多分これでヘビーメタル一曲作れる。俺は常に命と成績の危機にさらされている。
どうせなら瀬戸と同じ班が良かった。


「Kの死体を発見した時の私の気持ちって、言われても」


そう言いながら、花園ちゃんはマジック特有のキュピキュピした音を鳴らしてホワイトボードに文字を書いていく。

いやこれしかないでしょ、と呟きながら彼女はドヤ顔でホワイトボードを立てた。

『救急車の電話番号なんだっけ』

「花園さん、俺が殴るから救急車呼ぼうか？」

「演じて」

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