王宮からの使者 ページ32
「うー…甘いの食べたい……」
カウンターに突っ伏してボソッと呟いた私の言葉を拾ったマーリンを呆れた視線を向けられる
「自分の分は買わなかったのか？」
「色々買ったら懐が寒くなったので」
「買いすぎるからだ」
「ほら…人が喜ぶ顔を見ると嬉しくならない？」
人の喜ぶ顔を見ると、感情が死にかけている今でも胸が温かくなる。それがやめられずに強請られたら節度を持ってお土産に渡したりする。一種の麻薬のようなものだ
「あ、メリオダス様、これどーぞ」
自傷告白事件(仮)やら色々あったせいで忘れていたが、メリオダス様にお酒を買ってきたのだ
「せいしゅ？」
「この清酒というお酒はお米から造られているんです。アルコール度数は、15度前後ですからエールの３倍くらいですかね」
「旨いのか？」
「人によりけり…ですかね。辛口の方がスッキリとした味わいで甘口の方がフルーティーで口当たりが軽やかなんです。まぁ…辛口でもフルーティーなものもありますし、またその逆も然り。一概には言えませんけど」
「ふーん……ん？」
瓶のラベルに書かれた清酒の名前に気がついたらしいメリオダス様は、ジト目を向けてくる
「…言いたいことがあるなら口で言え」
ドン、とカウンターに置かれた瓶のラベルに書かれたお酒の名前を見てマーリンが軽く噴き出し、エリザベス王女とホークちゃんが目を丸くする
「『必殺・酒豪殺し』……？」
「ユーリちゃん、メリオダスに恨みでもあんのか？」
個人的な恨みならそれなりにあるが今は関係ない為、黙っておく
「〈アレグレア商会〉の開発部の子たちが中々面白い名前をつけていたのを思い出して買ってみたんです。メリオダス様にぴったりでしょう？」
見た目的には、いつもの飄々としたメリオダス様と変わらず分かりにくいがよく観察すると拗ねている
「要らないのなら回収しますが」
「いる」
「それは良かった」
「予想してたろ」
わざとらしく満足気な笑みを浮かべた私にメリオダス様が鋭いツッコミを入れる。和やかな空気が流れている中、それなりに強い魔力が近づいてきたことにより、ピン…と空気が張り詰める
「エルティアナ=リリアーヌ様は居られますか？」
「何か御用かしら？」
身なりを整えた聖騎士は、店内にいる私を見て胸を撫で下ろす
「エドワード様が王宮にてお待ちです」
「は……？」
まさかの人物からのお呼び出しを食らった私の間抜けな声が店内に響いた
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作者名：アストライアー | 作成日時：2021年7月24日 0時
