特別な私の皇帝2【野坂悠馬】

一星の行動 ページ36

一人テンション上がったけど、そんな場合じゃない。今大事な試合なんだから。



思った通り、簡単に勝つに真っ直ぐとはいかない。



ヒロトのザ・エクスプロージョンが止められたり、FWのアンドレアスたちが必殺タクティクス使ったり、アンドレアスが必殺技使ったり。円堂さんが止めてくれたから大丈夫だったけど、油断はできない。サウジアラビアは“アラブの火の鳥軍団”って言われてるくらいだし。



私たちFWも思うように前線に行けない。



そんなとき、一星が視界に入る。どこか辛そうな表情で焦ってる、かと思えば野坂を見て何か考えてる。



絶対悩んでるんだ。オリオンに従わないといけないから野坂を排除するかどうかで。でも、信じる。一星はほんとはやりたくないんだってことを。




「一星！」



そのとき、稲森が一星にパスを出した。



灰崎は気にくわない顔だけど、これは稲森が一星を信じたパスだって、確信する。戸惑いながらも高度な動きで進んでいってる。



「シュートだ、一星！」



稲森の声でシュート体制に入る一星。一星ならやってくれる、そうひたすらに祈った。





けど、それはゴールポストに当たって入らなかった。



一星なりに頑張ったことが伝わる。点は入らなかったけど、それでも今のシュートは私たちにとっては嬉しいくらい。



一星はやっと、本当に楽しいサッカーを見つけられた気がする。





一星が馴染んでプレーできるようになった頃、野坂がオーバーヘッドでボールをクリアした。



高い位置だったからヘディングが普通だけどわざわざオーバーヘッドにしたことに、疑問を持つ。



「野坂は今本調子じゃないらしい。
今頭に衝撃を受けると、二度とサッカーができなくなるんだ」



氷浦が私と同じことを思ってる稲森に言った。



『そんなの聞いてないけど…本当か？』



「あぁ。だから、俺たちでフォローしていこう」



そんなの知らなかった。ヘディングすらできないなんて。でも、怒りたかった。



もしヘディングじゃないと受け取れないようなパスを出してたらどうしたのか。



心配でたまらなかった。今は一星よりも野坂…。

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