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295羽 ページ48






「お前はとっくに白鳥沢の白鳥じゃないんだからな!!お前は烏野の白鳥だ!」



どうだ上手いだろ、とでも言いたげに自信満々に、そしてはっきりと。日向によって宣言されたその言葉は当たり前のようで今までなかったものだった。

チームメイトに拒絶されたあの日からずっと見えない、形のない何かに怯えていた。けれどそれは烏野へ来てから今日までの日々で少しずつ、そして確実に消えていって、やっと白鳥沢に縛られないただの"白鳥"になれたと思っていた。


その言葉を望んでいたわけではないし、考えたこともなかった。けれどこうして仲間に口にされた重みは計り知れなくて、何にも変えがたい。



「何それ……。」
「ネーミングセンス皆無かよお前。」
「ドヤ顔やめなよ。」
「なんだとー!」



笑顔がこぼれると同時に思う。やっぱりこのチームが大好きなんだ、と。









伊達工との練習試合から日が流れ、年も越した。Aは日向と谷地と山口とともに初詣に行き(影山と月島はどれだけ誘ってもこなかった)、必勝祈願。



「Aなんだったー?」
「大吉。翔陽は?」
「俺もだ!!」
「いいな……俺なんて中吉。」
「私なんて末吉だよ……なんかぱっとしない……。」



お参りもして、おみくじもひいて神社を後にした。帰り道の関係で必然的に2人になった日向とAは春高のことなどを話しながら歩いていたが、突然日向の足が止まる。



「どうしたの?」
「いや、なんかふと体育館行きたくなった。」
「体育館!?」



流石にこの寒い中労力を使う気にもなれず、日向とはそこで別れてAは家に戻った。




春高まであと4日、不安ばかりが募る。

出会ったばかりの頃はちぐはぐでヘタクソの集まりだった。小さな才能はあってもろくなコーチもいないためにその伸ばし方も知らない。けれどそこにひとり、またひとりとチームメイトが増えていった。信頼や技術が備わっていったのだ。




少しでも抗いたかった。自分は自分であって、“白鳥沢の白鳥”ではないと証明したかった。ひとりのマネージャーとして純粋にチームを作っていきたかった。そう思ってやってきた高校でまさかその白鳥沢に勝つだなんて想像もしていなかったこと。

それは今確かな現実となってここにある。




「絶対勝つ――。」







1月4日、AM 7:30。家のドアを空けて踏み出した。それはひんやりとした空気の漂ういつも通りの平穏な朝だった。





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さりあ(プロフ) - 古森くんと佐久早くんの番外編のお話がちょっと見当たらないのですが番外編part2にありますか??お話がすごい気になります!! (2021年7月31日 1時) (レス) id: bfe73c86d0 (このIDを非表示/違反報告)
柿の種梅しそ味(プロフ) - すみません。なんか…話数違いません?なんか重なってる… (2019年12月23日 16時) (レス) id: c64161dde0 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - ざらめ煎餅さん» とーっても嬉しいお言葉ありがとうございます!面白いだなんて畏れ多い…!凄く励みになります…!御期待、応援に添えるよう精一杯頑張らせていただきますので、どうぞこれからもご愛読いただければ幸いです(*´ω`) (2017年4月2日 20時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - tenipuri3rdさん» やっと続きを更新できます・・・!お待ちいただいてありがとうございました!楽しみにしていただけているようでなによりです(*´ω`) 恋愛のほうは正直行き当たりばったりですのでなにもかもが未定ですwそれでもこれからも楽しみにしていただければ幸いです! (2017年4月2日 20時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
ざらめ煎餅 - すっごく面白いです。更新頑張って下さい(`_´)ゞ (2017年3月31日 1時) (レス) id: 233c1dd62c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti  
作成日時:2016年12月23日 21時

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