・ ページ8
凛月side
薄暗い。
真っ黒でも真っ白でもなく、どこまでもどんよりとした灰色。
そんな空間に、俺は一人立っていた。
回らない頭で考えて、やっと１つの結論にたどり着く。
ああ、そっか。
俺は"また"ここにいるんだ。
どこかわからない、でも何度でも来てしまう場所。
いつのまに寝てたのかなぁ。
夜に寝るといつもこうだ。
『ここ』に行き着いちゃったら、もう誰かが起こしてくれないと抜け出せない。
そのせいで、一度は散々な目にあったっけ。
思い出して少し笑ったとき、視界の端に黒い影が見えた。
朔「……？」
気になって振り向くと、
朔「…A？」
笑顔で佇むAだった。
夢にまで出てくるとか、俺どんだけAのこと好きなの。
我ながら笑えてくる。
……でも、
朔「今日はここにいても怖くない。
……Aが、いるから。」
夢でなら、何言ってもいいでしょ。
なんて、普段言えないことへの言い訳だけど。
本当のことだから。
Aがいたから、薄暗い日常が色付いた。
Aがいたから、暗い夜も怖くなかった。
Aが、いたから＿＿＿＿＿＿＿＿
『……凛月。』
朔「……え…？」
名前呼び……？
それに、いつもと違う、大人びた声。
朔「……どうしたの？
普段は絶対呼ばないって頑固なのに。」
『……』
朔「……A？」
ねえ、なんで何も言ってくれないの。
朔「黙ってないで何か言いなよ。いつもなら強気で言い返すでしょ？」
ねえ、なんでそんな儚げに笑うの。
朔「…ねえ、」
＿＿＿＿なんでだんだん、遠くに行くの。
朔「A、」
待ってよ。
朔「勝手にどっか行かないでよ。」
置いて行かないで。1人にしないで。
朔「A……！」
いよいよAが見えなくなったとき、
辺りが一瞬で真っ暗になった。
朔「え……？」
なんで？いつもは灰色なのに。
混乱していると、
『凛月。』
また、声が聞こえた。
朔「……A？ねえ、どこに」
『ごめんね。』
……え？
なんで、謝るの…？
…………嫌だ。
『＿＿＿凛月、ごめんな。』
また…また、あのときみたいに……
朔「……っ、嫌だよ、A、A！
ねえ…っ返事してよ！！」
目元が熱くなった、その時。
背中に、勢いよく重力がかかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天野いろは
| 作成日時：2019年2月12日 12時
