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episode35 ページ37

突然泉くんが店にやってきたのは、最後アイスクリーム屋で会ってから一か月がたった日だった。
時の流れは早い。

息を吞むくらいにきれいな泉くん。
このまま時が止まって、世界中で二人きりになれたらいいな、なんて柄にもないことを思ってしまう。

彼を推し始めたころは、まさかこんな形で会うことになるとは思っていなかった。
すごくうれしいし、幸せで感無量ではあるけれど、さくらや店長の言葉が脳裏をかすめて素直に喜べない。

こうやって私と泉くんが対面することで、今度こそ泉くんに火が飛んでしまうかもしれない。
それはとても怖いことだった。
泉くんに迷惑を、負担をかけるようなことは絶対にしたくない。


「……A?」


料理のメニューを抱えたままぼーっとしてしまっていた私の名前を、泉くんが怪訝そうに呼んだ。
それで私ははっとする。

「ごっ……ごめんなさい、えーっとメニュー、です。飲み物やお料理の注文お決まりになりましたらお申し付けください……っ」
「んー、このサラダで」

差し出したメニューを見て、泉くんが注文した。
それをメモして、「ではいったん失礼します」とだけ言って席を離れようとする。

しかし、私はその場を動くことはできなかった。

──泉くんが私の腕をつかんだのだ。


見かけは細くて華奢な腕。
でも、その力は鍛えているのだろう、とても強かった。


「え……?」

「……あ……。ごめん」

泉くんは下を向いてぽつりとつぶやいた。
状況をまったくもって理解できない私は、ぐるぐる頭を回してみたけれど、やはりわからないものはわからなかった。

どうして今、私は大好きな人に腕をつかまれた?
引き留められた?

考えても、謎が深まるだけ。
うれしさもあったのだろう、胸は高鳴り脈は速くなる。


「今日、何時上がり?」

ふいに聞かれる。


「泉く──泉さんでLASTです」
「そっか。じゃあ待ってるから」

「……!?」

思わず固まってしまう。
待ってる──私を。泉くんが。


ありえないことの連発で、頭がおかしくなってしまいそうだ。

「ごめん引き留めて。戻っていいよ」

「……失礼しますっ……」

逃げるようにして小走りに厨房に向かう。

どういうこと、どういうこと、どうなってんの。
混乱ばかりだけれど、うれしくてうれしくて、舞い上がってしまった。

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咲愛(プロフ) - ツキさん» コメントありがとうございます!始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです!続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします! (2023年2月22日 16時) (レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ツキ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます!毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました!続き楽しみに待ってます! (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:咲愛 | 作成日時:2023年1月27日 12時

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