episode２０ ページ22
「じゃあ俺のことも薫くんって呼んでよ〜」
そういわれ、戸惑いながらも「薫くん」と呼んでみる。
羽風薫というアイドルのことは、ずっと「羽風さん」と呼んでいたのですごく違和感を感じた。
「よくできました」
「おれも名前で呼んでくれてもいいんだけどな〜？」
上目遣いでなずなくんが言う。
きれいな瞳にまっすぐ見つめられどぎまぎしてしまった。
うーん、あざとい。
「なずなくん、でいい？」
「うん……ありがと」
なぜか感謝をされた。
そのあとは、4人で他愛のない話をして、そのまま店を出た。
すべてがあっという間で、夢みたいだった。
「おれ大学戻んなきゃだからここで。
A、今日はありがとな。薫ちんたちも気をつけて帰れよ〜」
じゃ、となずなくんが小走りで去っていった。
こちらこそありがとう、と心の中で何度も唱える。
「俺もなんかもりっちに呼び出し食らったからここで失礼するね」
薫くんがスマホを一瞥してから言った。
「じゃあね〜Aちゃん。また会えるといいな」
ついでにせなっちもばいばーいと、手をひらひらさせて一人歩いて行った。
「……」
「……」
これでもかというくらいに気まずい。
店から出て数十メートル歩いた地点で、私たちはただ突っ立っている。
私も用事あるんで〜と言って離れるべきか、いやその前にきっと泉くんが……。
でも、この貴重な二人きりの時間を無駄にしたくない。
頭はぐるぐるまわっているが、何も思いつかず、ただひたすら黙りこくってしまう。
いっそこの沈黙すら楽しんでしまおうか、と盗み見るようにして泉くんの美しい顔に見入る。
本当に、非の打ち所がない。
どこを切り取っても、きれいだ。
「ねえ、」
ふと泉くんがこちらを向いて、目が合う。
どきっとして慌てて視線をそらしても、もう遅い
「え……なに、俺の顔に見惚れちゃってた？」
少し口角が上がった泉くんが、そんなことを言う。
私は自分の頬が赤くなっていることを、体温が上がっていることを、感じた。
「まあいいけど。ねえ、Aってどこら辺に住んでるの？」
「えっと──最寄りがアキバ」
「おけ、じゃあ送ってくから案内してよね」
「……」
予想だにしない返答に、私はまたも声が出なかった。
ちょっと話聞いてる？ と泉くんに顔を覗き込まれ、かろうじて「あ……」と絞り出したような声にもならない "音" だけが出た。
「い、いいんですか……！」
こんな仕事で知り合っただけの女を家まで送ってくれるなんて、本当に騎士みたいだ。
私の大好きな泉くんだ。
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咲愛(プロフ) - ﾂｷさん» コメントありがとうございます！始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです！続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします！ (2023年2月22日 16時) (
レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ﾂｷ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます！毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました！続き楽しみに待ってます！ (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲愛 | 作成日時：2023年1月27日 12時
