沈黙する悪魔【赤】 ページ18
彼と会えたのは、それから三日後、11月に入ってすぐのことだった。
もう 覚悟はとっくに決めていたけれど、前回 キッチンにグラスを置いたまま黙って帰ってしまって以来だったから、
私は…緊張していた。
……電話の声は普通だったけど、彼の本音は、いつも見えないから。
部屋に入ると、針を落とされたレコードがくるくると回る、その盤面を静かに見つめる彼がいた。
「…おう、座っとれ」
いつも通り、だ。
「…うん。こないだはごめんね、黙って帰ったりして…」
決意が鈍らないうちに、ちゃんと話さなくちゃ。
全身に力を入れたまま ソファに腰をかけながら、私はきっかけを探す。
「あー、起きておらんかったから、一瞬トイレとか探してもうたわ」
……彼が、私を、一瞬でも探した。
この人は、自分が放つ何気ない言葉の威力を知らない。
それでも、私はあの……軽々と空を飛ぶ、飛行機のスタンプを想い出す。
「…うん、ごめん。…いろいろ考えて…」
なるべく、間を、空けるな。
目を閉じて、息を吸って、言葉をつなげる。
「……もう、終わりにしたい」
ーーーああ、遂に言った。
いつか彼から言われるかもしれないと覚悟をしていたけれど、自分が言うことになるとは、一度も想像したことがなかった。
すべての懺悔をしきって、あとはもう、処分を待つのみの、罪人のように。
目を閉じたまま、私は大きく息を吐いた。
「……」
しばらくの間待ってみても、彼からの反応はない。
沈黙の中で、アルバムの最後、壮大な曲の美しいイントロだけが流れ始めた。
意を決してそっと目を開ける。
彼のほうにゆっくりと顔を向けたら、じっとこちらを見ていたから
……悪魔と目が、合った。
「…オトコでもできたん？」
顔色ひとつ変えずに、聞いてくる。
「そいつが、お前んこと幸せにしたる、て？」
「…違う、よ…」
彼の言う通り、ヤスくんがいたから、別れを告げる決心がついた。
ヤスくんだったら、曇りのない笑顔で、「Aちゃんを幸せにしたる」と、言ってくれるかもしれない。
けど……未来はそんなに簡単じゃないことは 明らかだった。
「なら なしやな」
「…え？」
「今の話は、なしや」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 759人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまご(プロフ) - ななさん» なな様、うれしいコメントありがとうございます^ ^ すばるくんとの旅行、一緒に楽しんでくださいね^ ^ (2018年1月11日 1時) (
レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、いつもありがとうございます！ 青さん派のあくあさんには申し訳ないですが、不器用すぎる赤さんとの旅行、一緒に楽しんでいただけるとうれしいです！ (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - psycheighterさん» psycheighter様、コメントありがとうございます^ ^ 有り難いお言葉、うれしいです…！ 彼らも大人なので、こんな恋愛していてほしいという、私の願望が詰まっておりますが…笑、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。 (2018年1月11日 1時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 今1番更新が楽しみな小説です。私はすばる担なのですばるくんと幸せになったらいいなぁとドキドキしながら読ませて頂いてます！ (2018年1月11日 0時) (レス) id: 6cdacb0f72 (このIDを非表示/違反報告)
あくあ - ほんと不器用すぎて切なすぎる。けど、それも赤さんっぽさが出てていい。あぁ〜映画化してほしい。笑 (2018年1月10日 23時) (レス) id: 4e4eb3dcc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月2日 17時
