五十六 ページ11
「高杉さんは、"記憶をなくす以前彼が私にとってどのような存在だったのか"を思い出せと言いました。...そすれば部屋から出してやる、と。」
なら正答はーーー憎むべき相手、なのだろうか。
「....高杉はそう言って欲しかったんじゃねーの?」
まるで自分を罰するように、俺を憎めと彼はいった。記憶が欠落したが故に築かれたこの関係に甘んじてはいけないと。
もうあの部屋からは連れ出されてしまったけれど、それでも、彼に答えを告げなければならない。
それは私と高杉さんとの歪な関係に終止符を打ってしまうかもしれない。でも、いつまでもそれが彼を苦しめ続けるというのなら、やるべき事は決まっている。
「....でもよ、お前自身はどう思ってんのよ。」
「高杉さんを、ですか?」
「ああ。」
私は、
彼を、
「もし憎んでるってんなら、思いの丈全部ぶちまけて殴ってやれ。関わりたくねぇのならずっと江戸にいりゃいい。」
「私は、」
「ーーーー全部知った上で愛してるってんなら、直接言ってやれ。そうじゃねぇとあいつわっかんねんだろ。」
それだけ言い残して、空のグラスとパックを両手にキッチンへ消えてしまう。
私はまだ記憶を取り戻してはいない。
けれど客観的な筋書きだけは見えた。
日常生活を営めない体は、恐らくどれい商に売り渡された先で何者かに与えられてしまったものなんだろう。
そして高杉さんは、そのことを悔やんで...。
「ほんっと、俺にはお前らが理解出来ねぇよ。昔っからな。」
「...私と坂田さんは、以前どんな出会いをしたんですか?」
「あー、やっぱそれきいちゃう?」
食器棚をいじる、陶器がぶつかり合う音がする。
リビングに戻ってきた坂田さんは大きなあくびをすると、私の頭をわしゃわしゃとなでて「もういい加減眠くもなっただろ。大人しく寝ろ。」といった。
昔話はお預けのようだ。
「あっそれと、」
寝室に戻ろうとしていた彼は思い出したように振り向く。
「お前、明日からちゃんと働き口探せよ。ここは高杉んとこみたくニートに優しい世界じゃねーからな。」
しっかり釘をさしてきた。
....労働、か。社会に出たい気分ではあるけれど、果たして体はそれについてきてくれるだろうか。
「んじゃ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
彼すらも寝静まった万事屋。
私はまた、眠れぬ夜を耐える。
235人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時