五十七 ページ12
梅雨入りを告げられた世界は肌にまとわりつく様な熱気を孕み、より一層士気を引き下げていた。
先生を失い、
生きる意味も戦う理由も消えた今、
俺たちは折れた剣を片手にさ迷うことしか出来ない。
戦場の真っ只中で豪雨にあい、今にも発狂しだしそうなほどの鬱々とした気部分を抱えたまま雨宿りをしていた。
野崎A。
そいつと会ったのは、薄汚い納屋の中だった。
縄で縛り付けられ、抵抗する気も失せた様子のそいつは、ただどこともつかぬ1点を見つめ続けている。
「おい。」
声に反応して、視線をこちらに向ける。
気味が悪いほど綺麗な肌をした女だった。
「あなたは.....?」
「まぁ、なんだ。ただの通りすがり。」
積まれた藁の上にどかりと腰を下ろして、ボロボロに崩れた天井を見つめた。遮るもののないそこからは雨が濁流のように流れ込み、酷い有様だ。
「お前さ、何で天人なんかに手貸しちまったわけ?あ、嫌味だの説教だのじゃねえから。...率直な疑問。」
俺はとにかく現状を直視したくなかったんだろう。他人の思想を流し込んでいたかった。
彼女は掠れた声で答える。
「手を貸してなんていませんよ。」
「....あっそ。」
あまりに単純な返答に興味をなくし、特にそれ以上問いかけることは無かった。
「...あの人は、今どうしていますか。」
あの人。
それが高杉のことを指すのだと気づき、荒れくれた姿を思い浮かべる。何とも言いようがなくて、「落ち込んでんじゃねーの。」とだけ返した。
「今のままでは何をしでかすかわからないし、....第1ご飯もきちんと食べていないだろうから。少し心配ですよ。」
自分を冤罪(自称ではあるが)で捉えている男の心配をするやつなんざ見たことがない。
真意を読み取れないまま、俺は曖昧な返事だけを返す。
「あんな野郎の心配する暇あったら、自分のこと心配した方がいいんじゃねえの。」
「それもそうですね。」
わりと単純に出来てる俺は、その微笑に魅せられたのか、そっぽを向きながら妙なことを口走る。
「.........そんな気になんなら、直接見に行くか?」
「え?」
「俺は構わねーよ。」
目を見開いた彼女は、すぐに力無い笑みに表情を戻す。
「....いえ、辞めておきます。」
帰ってきた時私までいなくなってしまったら、あの人が寂しがっちゃいますから。
そんなことを呟く女は、随分酔狂なやつだと思った。
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★九尾★(プロフ) - 面白いです!めっちゃ楽しんで読ませてもらってます!更新頑張ってください! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 鷹さん» お読み頂きありがとうございます!他ジャンルの方からもそのように言っていただけてとても嬉しいです!今後もよろしくおねがいします! (2017年10月5日 7時) (レス) id: 0cde9ce314 (このIDを非表示/違反報告)
鷹(プロフ) - 普段銀魂の作品をあまり読まない者ですが…とても面白くて一気に読んでしまいました!今後も楽しみにしております! (2017年8月31日 0時) (レス) id: fec64aa2a0 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あやかさん» ご感想いただけてうれしいです!コメントありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします!! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - なるぽんずさん» ほんとうですか...!!ありがとうございます!この後、徐々に明らかにしていきたいなと思っておりますので。今後もお付き合いいただければと思います! (2017年8月5日 12時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月22日 2時