7 その影に隠れた ページ8
神田さんが店にやってくるのはいつも決まって日曜日の夕方。常連さんになっているのもあって、彼が来るのを楽しみに思うようになっていた。けれどもここ最近、物騒な噂が流れている。それがAKUMAの仕業ならエクソシストは忙しい盛り。明日は来られないかもしれない。
土曜日はいつもより少し遅い、お昼からの営業。喫茶店とはいうものの軽いランチも出しているため午前中から仕込みをする。
今日は曇りだから材料は少なめにしておこう。雨が降れば一般のお客様は少ないだろうし。
店の扉についた鈴がちりんと音を立てた。
「よぉ、お嬢ちゃん、ここのコーヒーが美味いって聞いたんだが……開店前だったか？」
「構いませんよ。普段土曜日はお昼からの営業なんですが、せっかく来ていただいたので」
ここらではあまり見掛けない明るい茶髪。すらりとした長身の男は人当たりの良さそうな雰囲気を醸し出している。まだ肌寒いためコートが手放せないようだが、かなり高級なものだ。洒落た革の鞄からも都会の人らしさが出ている。
色々考えながらAはコーヒーを淹れる準備を始める。
「オススメはあるかい？飲みやすいやつで頼むよ」
「モカマタリっていう豆はどうでしょう。上品な甘さと酸味が魅力です」
「モカか、いいね。じゃあそれで」
男はカウンター席に座り、店内を眺める。この店はアンティーク品のような家具やたくさんの本があるため、初めての方はかなり興味深げに見ていくことが多い。常連客の中にはここにある本が目当てで通っている者もいた。
「古い本が多いな、まるで書庫だ」
「この店は古い図書館を改造してできたもので。中にカウンターと席をつけただけで後はそのままなんです」
「なるほどねぇ。だからこんなに不思議な雰囲気なんだなぁ」
小さいが暖炉もあるし、中々良い図書館だ。本の多いところに火があるのはどうかと思うが、あまり使われていなかったようだし問題なかったのだろう。
「考え事の最中でしたか、すみません」
淹れたばかりのコーヒーを目の前のカウンターに置くと、男は少しびっくりしたように顔を上げた。仕事の気晴らしに喫茶店へいらっしゃるお客様は案外少なくない。お疲れのところ邪魔してはいけない、とAが心配そうに顔を覗き込むと男はにこっと笑う。
「あぁ、気にしないでくれ。ちょっと考え事をしていたんだ。おお、いい香りだね」
どうやら気に入ってもらえたようだ。
Aはホッと息をついた。
8 鬼はひっそりと間合いを詰めていく。→←6 今日もまた駆けだす。
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湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました！応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (
レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました！ (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね！無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湫 | 作成日時：2016年3月23日 9時
