6 今日もまた駆けだす。 ページ7
神田は任務を淡々とこなし、もう帰路についていた。このペースだと日曜にまたあいつのところへ顔を出せるかもしれない。そう思うだけで頬が緩みそうになり唇を強く噛む。まだ列車の中だというのに何を気の抜けたことを考えているのだろう。
ファインダーたちに腑抜けた面を見られるのは勘弁だ。
舐められては堪らないし、なにより今まで遠ざけてきた人々が近づいてくるかもしれないということが嫌で仕方なかった。
自分が信じられる人というものがいなくなってからは人との馴れ合いを極端に嫌うようになった。いや、元から好きではなかったが、もっと嫌いになった。
だからあの笑顔を見たときに驚いたのだろう。少し、人懐っこいあいつに似ていたから。
人とふれあうのが好きで、みんなと仲良くしたいという気持ちが表れた、純粋な笑顔。
彼女の自分の淹れたコーヒーを喜んでもらえたらいいなという素直な気持ちがすっと心の隙間に入り込んで来た。
こんな奴が他にもいるのだ、と気づかされた。気づきたくなかったのに気づいてしまった。
気づけばまた失う悲しみを味わうことになるから目を伏せて避けるようにしていた。
(俺はあいつのような奴が必要だったのかもしれない)
いつでも変わらない優しげな笑みを見せてくれる太陽のような存在が。
「神田さん、着きましたよ」
「あぁ」
さっさと列車を降り、ふと振り返る。先程まで降っていた雨が上がり虹が出ていた。
次の任務が終われば少し休暇が取れる。
そしたらまたあの喫茶店へ行こう。
あいつと話をしよう。
ぼーっと考えながら人の流れに逆らうようにして教団へと歩いていく最中、ある声が耳に飛び込んできた。
「なんかあの辺最近物騒らしいな。連続殺人とかの噂だぜ」
「えー？じゃあコーヒー飲みに行けないじゃん。あの喫茶店の子可愛いしあそこ気に入ってたのに」
連続殺人事件……ただの事件であればいいが、もしそれが通り魔的な無差別なものだったら。散歩をしていただけのAが狙われたら。
足が動いていた。さっきまでの疲れが吹っ飛んだように重かった体が軽く感じる。とにかく行かなければと思った。連続殺人事件の黒幕がもしかするとAKUMAかもしれないし、なんて言い訳をして。
「神田さん⁉どこ行くんです⁉」
「悪い！先に帰ってくれ！」
驚くファインダーを横目に全速力で来た道を逆戻りする。
彼女が無事でいてほしいと心から願った土曜の夕暮れ時。
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湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました！応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (
レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました！ (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね！無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湫 | 作成日時：2016年3月23日 9時
