番外編 ページ29
季節は夏。入道雲が私たちを見下ろすようにそびえ、空は真っ青に晴れ渡る。
周りに咲いている花に水をやって、ふぅと一息吐いた。こうも暑いとぐったりしてしまう。客足は伸びつつあるが、これでは客をもてなす側の私が参ってしまいそうだ。
ザサはあれからよくここへ遊びに来る。
恐らくAKUMAの攻撃を警戒しているのだろうが、彼が去ってからは何事もなく静かで平穏な日々が戻ってきていた。
「あいつまた来るとか言って全然こねぇな」
「エクソシストは数が多くないもの、忙しいんじゃない?」
「あ、そういやお前今日誕生日だったよな!おめでと!」
「ありがと」
ずっとこうして私のことを気遣っているように思える。彼が自ら私を嫌って去ったのではないとわかっているから私は大丈夫なのに。
きっとザサも彼が無事なのか心配でいるのだろう。何せ彼を連れて帰るために敵の方へ飛び出して行ったくらいなのだ。
店の軒先で世間話に盛り上がっていると、突然ザサが立ち上がる。そして一目散に駆け出した。
もちろん、その先には彼が。
「神田さん!」
「……中々時間が取れなくてな。せめて誕生日くらいは祝いたいと思って来たんだ」
「お前ほんとその仏頂面どうにかなんねぇのか!」
ザサのことは華麗にスルーし、私に何やら小包みを持たせる。誕生日プレゼントだろうか。開けていいかと問うと少し微笑み勿論だ、と頷いてくれた。
丁寧に施された包装を解いて中を覗いてみると、そこには何とも可愛らしい小紋が入っていた。私が前に日本の着物を着てみたいと言ったのを覚えてくれていたのだろうか。帯とも良くあっていて趣がある。
「本当は
「とても素敵なプレゼントありがとうございます!今度着方を学んで着てみますね!」
そう言うとホッとしたようにまた頰を緩めた。
彼は以前よりずっと柔らかく、艶っぽい雰囲気になったのではないだろうか。
ますます好きになってしまう、ずるい方だ。
「俺で良ければ着方を教えるが?」
「ええ⁉……服の上からで良ければ教えてくれませんか?」
「……さすがに脱がせる気はない。1人で着付けするのは意外と難しいからな」
そっと私の後ろへ回り、覆い被さるようにして着物の着付けを手伝ってもらう。
すぐ側に彼の息遣いを感じ、硬直していると彼もまた耳を真っ赤に染めていた。
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湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました!応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました! (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね!無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:湫 | 作成日時:2016年3月23日 9時