25 天気雨 ページ26
思わず涙が溢れた。涙は冷たいものだと思っていたが、予想外なまでに熱くて止まらない。堰を切ったように流れ出す。神田さんは焦った顔をしているが私にはそれを止めるすべがなかった。
「それほど嫌か？」
困惑したように、少し寂しそうに言う彼を見て本当に好きなんだと再度認識する。
そして思い出したように動き出した思考をフル活用してなんとか答えるべき言葉を探し出す。
「いえ、嬉しくて」
その言葉を聞いて神田さんはホッとしたように笑う。初めて自然な笑顔を見たかもしれない。それがまた嬉しくて抑えようのない幸せを噛み締めて私はまた涙が溢れる。
「……よかった、嫌われたかと思った」
そう呟き、優しく涙を拭ってくれる。これも初めて見る表情だ。儚くて心から安心した、とわかる優しげな笑み。
「私も好きだって言おうとしていたんです。届かなくてもいいから伝えておこうって」
「……あぁ」
「今日もまた良い天気ですね」
小雨が降っている。雲の隙間から僅かに太陽の光が差し込んでいつもより少し幻想的に見える。
「俺と会った場所を覚えているか？」
「ええ、もちろん」
「あそこに一輪、水芭蕉が咲いていた。……見に行かないか。今度は俺が案内する」
「お願いしますね」
地面は少し濡れていて、土の香りがした。
池の淵に白色が見える。
あれが先ほど言っていた水芭蕉だろう。
一輪だけだがとても清楚で可憐な雰囲気を醸し出している。
「水芭蕉の花言葉は２つあるんです。変わらぬ美しさともう１つ、美しき思い出。私の中では神田さんとの過ごした時間がとても楽しく感じられました。あなたもそう思ってくれていれば嬉しいのですが…」
「楽しくなきゃ何度も喫茶店に通ったりしない。楽しい時間をありがとう。……これからもよろしく頼む」
「はい、お待ちしております。いつでもいらしてください」
「……またな」
happy end?
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湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました！応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (
レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました！ (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね！無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湫 | 作成日時：2016年3月23日 9時
