21 気の強い青年 ページ22
「神田くんここ最近元気ないね」
「いつもに増してぶっきらぼうなだけじゃないですか？」
「好きな女でもできたんさー？」
「まさか！あの神田ですよ？」
いつもならうるせぇ！と怒鳴り静かにさせるところだが、それすらも面倒だった。あいつの怪我は治ったのか。じわじわと体を蝕み死に至ってはいないだろうか。あれから村にクロウは現れていないのか。
悩みの種は尽きない。
それでも頑なに村へ行こうとする体を心で制御しようとしている。俺が行ったら意味がない。
「神田くん、もし任務先でやり残してきたことがあるなら……やってきなさい。辛そうな神田くんを見てられないし、次の任務に支障をきたすわけにも行かないからね」
教団の鍛錬場で座禅を組んだままずっと考え事をしていた。集中できないどころではない。雑念が浮いて消えないばかりだ。
コムイはとっくに俺のそんな様子を見抜いていたらしい。心配そうに顔を覗き込ませてくる。今回ばかりはこれが余計な心配だと思わなかった。
「……みんなには内緒だけど君にお客さんが来てるんだ」
「！」
Aは俺があそこまで言ったから来なかっただろう。ならザサか。
「心当たりのある顔だね、ついておいで」
コムイの後ろについて行く。見慣れたその背中からはほんのりとコーヒーの匂いがした。一体何杯飲めばここまで体に匂いが染み付くのか。少し呆れながらも洞察力の鋭さに舌を巻く。どうしてわかったのだろう。いつも通り話してもいないのに。
「神田くんはねぇ、意外とわかりやすいんだよ」
まるで心を読んだかのように簡単に答えが返ってきた。いい上司ではあるのだが、やはりどこか苦手だ。
「ザサくん、お待たせして悪いね。神田くんを連れてきたよ」
「いえ、お忙しい中すみません」
やはり待っていたのはザサだった。
緑の鋭い瞳を爛々と輝かせまっすぐにこちらを見つめてくる。一度逃げ出した身としては少し眩しすぎるくらいだ。
「元気そうだな」
「……あぁ」
「相変わらず愛想ねぇなぁお前。それはそうとさ、神田。お前の仕事ってあの殺戮兵器と戦うことなんだろ？ならさ、いつ死ぬかわからねぇんだよな」
「そうだな」
こんなところで真実を話しても仕方のないこと。ザサの前では普通の人間のように振舞っておこう。その方が何かと都合がいいこともある。
「明日死ぬかもしれないお前が思い残すことはないと言い切れるか？」
ザサの目には鋭く真剣な光が灯っていた。
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湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました！応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (
レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました！ (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね！無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湫 | 作成日時：2016年3月23日 9時
