2 夕暮れ時、訪れる ページ3
「また来てくださったんですね」
「……ここのコーヒーが気に入ってな」
任務帰り、わざわざ教団と逆方向であるこの店に寄った。なぜかと言われると答えに困るが強いて言うならこの店が気に入ったからだろうか。
のどかな村の端にぽつんと１つある喫茶店。
趣のあるこの店には以前気づかなかったが、たくさんの本があるようだ。
螺旋状の階段が上に続いていて、その壁沿いが本棚になっている。
今思えば懐かしいような香りがしたのは本のインクの匂いだったのかもしれない。
「今日はどれにしますか？」
「……タンポポのコーヒーなんてあるのか」
「えぇ、お花の方ではなくて根を洗って乾燥させて煎るんです。コーヒー豆は使わないのでカフェインはありません」
「じゃあそれで」
「かしこまりました」
中々手の込んだ事をしているな。それにこんなにある本を全て読んだというのだから知識も豊富なようだ。
生薬なんかも作れるらしいし、かなり頭も良いのだろう。俺にはさっぱりだ。
神田はコーヒーを一口すする。
「お前、薬学の知識もあるのか？」
「少し。ここじゃ大した戦闘もありませんし病などもないので役に立ちませんが」
神田は一つ深呼吸をしてAを見つめる。
こいつは見つめるいつもにこっと可愛らしい笑顔を見せてくれる。それが客に向けたサービスだとしてもなんとなく嬉しく感じた。
「教団に、来る気はないか」
何を言っているんだ、と自分で思った。
Aは予想外の言葉に目を見開いている。それもそうだろう、数回店に通っているだけの教団の者にまさか自分が来ないかと誘われるとは思いもしないはずだ。
「そうですね、考えておきましょうか。ここのところお客様が減って暇していたところなんです。さすがにすぐ決めることはできませんが、次お越しいただいた時には答えを出せるかと」
「そうか、いきなりすまないな」
「いえ、お誘いありがとうございます」
やんわりと遠ざけられた気がする。まあそれでも構わない。俺はここへ通うだけだろう。
何故かここは気分が落ち着く。怒りも孤独もここに来ている時だけはそっと収まっていくような気がするのだ。
「……また来る」
「ありがとうございます、次のご来店お待ちしていますね」
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湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました！応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (
レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました！ (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね！無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湫 | 作成日時：2016年3月23日 9時
