13 哀れなカラスにご慈悲を。 ページ14
クロウ、実のところそれもまた彼の本名ではなかった。彼の両親が死んでからというもの彼に関わる人は居らず、名前を呼ばれなくなったせいか、いつの間にやら本名を忘れてしまっていた。
それからは名前に執着せず、偽りの名で渡り歩くようになる。彼は寂しかったのかもしれない。あまりに人に愛されなかったせいで人の気持ちを理解することが苦手である。
「…………お前は俺が怖くないのか？」
静かに佇むAをクロウは怪訝そうに見やる。Aはというと、疲れたような表情を見せながらも笑ってみせる。
「あなたはきっと悪い人じゃない。なんとなくそう思いました」
まるで客人をもてなすみたい、と控えめに笑ってみせる。その笑顔が余裕を見せつけるわけではない。だが全く怯えを感じさせないのだ。神田が助けに来てくれると信じて疑わないからだろうか。
「今日の午後、神田が来るかもしれない。逃げたきゃ逃げればいい。最初からお前は神田を釣るためだったからな」
「顔を見られたから殺す、じゃないあたりやっぱり優しいんじゃないですか」
そう言い、可笑しそうに笑っている。こいつといるとかなり調子が狂う。苦手なタイプだ。
「どうして神田さんを狙うんです？」
「……誰がお前に教えるか」
さてと、こいつに構っている暇もない。もうしばらくすると神田が来るはずだ。レベル1を数体案内として放っておいた。あれを倒せないような輩ではないことはわかっているし、よぼどのバカでなければ事を悟れるはずだ。
あの村にいたガキも連れてくるかもしれないが……ガキが一人増えたところで何も変わらない。
「クロウっていうのは偽名ですよね」
「…….あぁ。本名なんて忘れたからな。俺みたいな裏の仕事する奴にはぴったりだろ」
真っ黒のカラス。死体を漁る仕事も訳無くこなした。穢れた人間は何にも成れはしない。表の世界は明るすぎて生きられない。
「それなら私は……」
とAが言いかけたところで、家中に爆音が響き渡る。
始まった。
神田が来たのだろう。
「アンタはそこの扉の後ろに隠れてろ、死にたくなけりゃな！」
コンクリートの壁を簡単に壊す奴だ。どこから突っ込んでくるかわかったもんじゃない。
だけれどもそのスリルさえも楽しく感じてしまう。さぁさぁ、ようやく本番だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました！応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (
レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました！ (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね！無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湫 | 作成日時：2016年3月23日 9時
