11 可憐な彼女は ページ12
隣の部屋で控え目にベルが鳴らされた。彼女が起きたということだろう。あの喫茶店の二階にあった彼女の衣類や小物を持ってきたから、ここで少し生活するにあたって不十分なものは特にないはずだ。
神田がここに来るまではAを軟禁することになる。人質だから殺すわけにもいかないし、難しいところだが隣の部屋にいるのなら手を出さずに済みそうだから隣に来てもらうことにした。
さて、問題は彼女が俺の名前を知っていたことだ。この仕事をしている限り、本名を知られることはほぼ無いはずなのだが。それにあのような少女とは特に会った覚えもない。
まぁ聞き出せば済むことだ。
クロウは扉の鍵を開ける。古い倉庫を改造してできたこのアジトの扉は少し錆び付いていて嫌な音を立てる。
「……単刀直入に言う。アンタは今から俺が言うことに答える義務がある。今は俺がアンタの命を握っていることを忘れるな」
静かに頷き、彼女は薄っすらと笑みを浮かべる。悲しげにも寂しげにも見える笑みだった。やはり彼女は俺のことを知っているのだ。それだけはもうとっくにわかっていた。
「何故、俺の名を？」
Aはやっぱりな、というとように目を伏せる。躊躇うように唇を開けたり閉じたり。言うか言わないか迷っているようだった。しばらく待っているとようやく決心したように俺の目をじっと見つめ呟くように言った。
「『雨の日も悪くない』と思いませんか？」
そういえば先程から雨が降っている。けれどもこの部屋に窓など無く、外の様子を知るものはない。彼女の問いかけにしては変だし、そもそも答えになっていない。
「……あぁ、悪くないな。なんでか、ある時から嫌いじゃ無くなったよ。理由なんて忘れたけどな。じゃあ次はお前が答える番だ。俺の質問に答えろ。どうして俺のことを知っている？」
壊れた様子はない。壊れたなら目が虚ろで何も映さない。だけれども彼女の目は澄んだままだし、言動が変だという確信もない。一体どういう意図があったのか。
「覚えていませんか、森で私と会ったこと」
小さく呟かれた言葉はパズルのピースのようで歪に感じられる。彼女と会った記憶は全くないが、自分は彼女と会って名乗りでもしたのだろうか。
「……まあいい。しばらくここで過ごすことになる。色々と説明をしておこうか」
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湫(プロフ) - 神田ユエさん» こちらこそ拙い作品に最後までお付き合いいただきありがとうございました！応援メッセージもとても嬉しかったです、気が向いたらまた番外編を更新するかもしれませんのでよろしくお願いします。 (2016年7月23日 13時) (
レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
神田ユエ - 感動をありがとうございました！ (2016年7月23日 11時) (レス) id: 1e0d488be5 (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - アイアさん» お返事遅れてすみません。更新は相変わらずノロマですが見放さず最後まで見届けていただけると幸いです。 (2016年5月24日 16時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
アイア - 更新、頑張ってくださいね！無理はなさらないよう体調も崩さないように気をつけてください。お待ちしております (2016年5月5日 23時) (レス) id: ef2d1622aa (このIDを非表示/違反報告)
湫(プロフ) - 名無しさん» 更新は不定期になりがちで申し訳ないです。月に一度は必ず更新するので気長に待っていただけると幸いです (2016年4月25日 19時) (レス) id: e79bcec08f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湫 | 作成日時：2016年3月23日 9時
