とある戦者の物語【庭球浪漫/幸村精市/夢無】 (ページ3)

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幾度目の夜ページ3

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やがて、人通りはちらりほらりと減っていき。誰も通らなくなった道を、月と星の光が照らした。

もう何度目の夜だろう。幸村は、静かに再び空を見た。

見上げた月は、紅かった。まるで自分が背にする壁のような。そんな、紅さ。

「……」

昔も、こんな月を見たことがあるような気がした。

その時はまだ、彼らがそこにいたのに。

(……あの時は……そうだ、なかなか寝付けなくて……外にいたんだ。)

そうしたら、彼らがやってきて。

『どうした。明日は早いぞ、早く寝ろ。』

『ああ……ごめんごめん、真田。わかってるけど、寝れなくて。』

『何を見ているんだ精市？……ああ、月か。驚いたな、まさか月食に立ち会えるとは。』

『げっしょく……？』

『月が太陽に隠れて、紅く染まったように見えるんだ。滅多に出会えない現象だぞ。』

『ふむ……ならば、三人で少し見ていくか。』

(物知りだったなあ、蓮二は。それもそうか、入隊する前まで大学に行ってたんだから……真田も、わざわざ付き合ってくれて……)

思えば、この街に入る前の日だったような気がする。

そう、ぼうっと紅い月を眺めるうちに。再び夜が明け、街に朝が訪れた。