3話 ページ4
火影様に報告書を渡し、退出をしようとすると談話室に通された。何か真剣な話でもあるのではないかと勘繰っていると「そう緊張せんでええわい」と火影様は朗らかに微笑まれた。
「――して、A」
「は、はい!」
最近カカシとはどうじゃ。
吐き出された言葉に息が詰まる。どうしてそれを聞くのだろう。いや、そんな事より聞きたいことが。
「……あの、火影様」
「なんじゃ」
にこり。太陽さえも包み込んでしまうような表情で見つめるのだから私は少し怖気付いてしまった。火影様のこういうお処が正直苦手だ。火影様のことは尊敬しているけれど、私にとって火影様は神様のような存在で、今こうして話しているだけでも様々な理由で泣きそうになる。
けれども聞かなくてはならなかった。ずっと、遠くにいた彼の影を密かに追ってきたのだから。
「はたけカカシは、どうして上忍師に、」
なったのですか。そんな語尾は吸い込まれた。
予想どおり。火影様はそんなお顔をされていた。そうして口から煙を吐き出すとどこから話せば良いのじゃろうか、と言葉をついた。
「……カカシが辛い思いをしてきたのは、Aも知っておるな」
「はい、」
だからこそ、彼のために出来ることはないか、たくさん悩んだ。その結果彼から距離を置くことにした。有り体にいえば逃げたのだ。
「今のカカシにそれが必要だと思ったのじゃ。――そしてカカシにはA、お主の存在が必要不可欠だともな」
一拍の間、私は動けないでいた。どういう意図がそこに含まれているのか理解できなかったから。
カカシに私が必要って、何?
「して、お主にもカカシが必要じゃ。……幼い頃のお前たちは、そうして生きてきたじゃろう?」
「お言葉ですが火影様!」
声を荒らげてしまってハッとする。それはもう
「A。こっちに来なさい」
「……火影様」
「ほっほ! 今はAのおじいちゃんじゃ!」
こどもの癇癪のようにあふれる涙を拭っていると「これこれ」となだめられる。そうして抱き寄せてくださり、その身体はひどくあたたかかった。
「A。怖いなら我慢しなくて良い。ワシにならいつでも吐き出しなさい」
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作者名:透桜子 | 作成日時:2021年10月30日 23時