1話 ページ2
桜の雨がしとしとと降り注いでいた。窓を開けて桜を掴み取り、鼻腔に近づける。――春だ。春の匂いがする。
カカシ先輩と最後に桜を見たのはいつだっけ、と思いに深けては紫苑色の瞳を揺らして「ああ、」と深い溜息をついた。
――あの頃は何も知らなかった。
ただ、再び訪れる春を恋憧れて、またあなたと再会出来ればと思っていた。思えば、悲劇は既に開幕していたのだと思う。
オビトさんが死に、リンちゃんが最愛の人の手によって命を落とし、九尾襲来事件でミナト先生は里の民の生命と御自身の生命を天秤にかけて、この世を去った。
オビトさんが逝去されてからカカシ先輩は更に狂い始めた。オビトさんの遺産を駆使して任務に明け暮れ、深く、深く闇に染まっていった。……誰にも止められなかった。カカシ先輩が聞く耳を持たなかったから、なんてこれは言い訳で多分私達は恐ろしかったのだと思う。
行動には責任が伴う。
私達――いや私は止められなかった万が一を前提に、それとなく彼を避けていたのだ。
無論、彼も気づいていたことだろう。だから、今更近づくなんて都合が良すぎるし“最低”と罵られても文句の言いようがない。私は捻くれ者だから、自ら起こした矛盾でさえ傷ついてしまう。……でも、これで良いのだ。
私は、あなたの傍にいれたら――それだけで幸せなのだから。
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作者名:透桜子 | 作成日時:2021年10月30日 23時